2026年食トレンド解説&5,000円の水が売れる理由 25年11月第4号

今週は19個のニュース、書籍1本、ノルウェーの国営酒屋をご紹介。今週は12,539字でお届け。
南坊泰司 2025.11.26
誰でも

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マーケティングトレンドインプット 今週のクイック解説3選

2026年の飲食トレンド解説。来年はどんな「食べ物」が盛り上がるか?

毎年恒例、ホールフーズの食トレンド予想から、2つ抜粋して仮説します。

Focus on Fiber(食物繊維に注目)

そもそも生活者の95%は推奨される食物繊維摂取量(女性25g、男性38g/日)を満たしていないらしい。こう聞くと、そこまで足りていないと感じる人はすくないはずだが…実際は現代の生活者は食物繊維不足である。

一方で食物繊維に関する研究は進んでおり、例えば腸内のマイクロバイオームが大幅に進展してプロバイオティクス市場が盛り上がったり、マンジャロなどのGLP-1に作用する薬に発酵性食物繊維が有用に働く、などのポジティブな効果が報告されている。

食物繊維は身体によいだけでなく、満足感を作りやすいために身近。さらに腸内環境への注目度も高いため、2026年もトレンドは広がりそう、ということ。

Kitchen Couture(キッチンクチュール)

食品パッケージがどんどんおしゃれになり、キッチンやダイニングのインテリアとして有効に働く、という分析。そもそも華美に盛ったり、加工したり、といった映えの文化は近年退潮しており、代わりにInstagram、Pinterest、TikTokではより身近な見せ方がポジティブに。そんな中で「シェルフィー」(棚の自撮り)文化、「フリッジスケーピング」(冷蔵庫内装飾)が海外ではバイラルしている。誰にでも出来て、そして身近で、自分らしさを演出する生活感の開示としてこうした文化は広がっている。

とはいえ、あまりに所帯じみていたらそれはそれで恥ずかしい。そんなときにキッチンやダイニングを彩ってくれるのが、こうした素敵なパッケージや見せ方をする商品なのだ。これまでは冷蔵庫や棚の中にしまい込まれていた調味料やボトル。無造作にキッチンにあるだけで、さりげなく素敵に見えることが大切。

ゲオの社名変更。社名は一体何をあらわすツール。グループの「攻めの社名変更」とは?

ゲオが「セカンドリテイリング」に社名変更する理由

ゲオホールディングスが、社名を「セカンドリテイリング」に変更する。2025年3月の株主総会で正式決定予定。長く親しまれた名前を捨てる。その理由は、リユースショップ「セカンドストリート」が、もはやゲオを超える規模に成長したから。

セカストが、本体を超えた

セカンドストリートは国内外で急拡大し、1000店舗を視野に入れる規模に達した。もはやゲオのレンタル事業ではなく、セカストのリユース事業がグループの中核になりつつある。新社名「セカンドリテイリング」は、2つの意味を持つ。第一に、セカストを想起させる。第二に、「2nd hand=リユース全般」を司る企業であることを示す。「リユース」ではなく「セカンド」を選んだのは、グローバル展開が前提だからではないだろうか。海外では「セカンドハンド」は単なる中古品ではなく、価値が高くクラフト感のある商品を指す。日本語の「リユース」よりも、ポジティブなイメージがある。実際、ゲオグループは衣類だけでなく、高級品、中古スマホのリユースも手がけ、北米にも進出。「セカンド」を標榜することで、世界と戦うリユース企業として生まれ変わる意思を示した。

ファーストリテイリングとの関係は?

正直、ユニクロを運営する「ファーストリテイリング」を連想するが…公式見解では無関係。そもそもユニクロの「ファースト」はFast(速い)が語源で、1st(第一の)ではない。しかし、副次的に連想させる効果は狙っている可能性がある。ファーストリテイリングが新品の衣料で世界を制したように、セカンドリテイリングはリユースで世界を制する——このストーリーは直感的にわかりやすい。

ホールディングス名は、企業DNAの宣言だ

ホールディングスの名称変更は、店舗の屋号を変えることとは異なる。経営戦略と企業DNAを社内外に宣言する手段だ。回転寿司スシローの運営会社は「FOOD & LIFE COMPANIES」。この名前は、事業領域を寿司だけに留めず、日本文化を背負いながら世界に広げる意思を示している。セカンドリテイリングも同じ。ゲオという日本のレンタル事業ではなく、セカンドハンドという世界で通じる領域で戦う。この意思を、社名で宣言したのだ。

社名は単なる記号ではない。従業員、投資家、顧客——すべてのステークホルダーに対して、企業の向かう方向を示す最も強力なツールである。「攻めの名称変更」は、企業の本気度を示す。セカンドリテイリングの挑戦は、どこまで世界で通用するだろうか。

5,000円の水の衝撃。「あえて高いものをリリースする」プライシングのマジックとは?

5,000円の水が売れる理由——価格がブランドを作る

MTGの美容ブランド「ReFa」が、5,000円超えの水を発売。富士山頂上付近の永久凍土の下で約70年かけて磨かれた地下水を採取した商品。天然水に5,000円を正当化できる科学的根拠があるか。答えはノーだろう。ただ、この水は既にSNSで「飲んでみた」報告が散見される。なぜ売れるのか?

「一番高い」が、価値を作る

人間は、一番高いものに価値を感じる。栄養ドリンクを選ぶ場面を想像してほしい。調子が悪い時、重要な仕事の前——こうした時、普段より高い商品を選ぶ。成分を細かく見るわけではない。「高い=効く」というように、価格が効能を決定するようなイメージ。

5,000円の水も同じ。「一番高い水を出している」という行為自体が、おもてなしの手段になる。LAの高級スーパー、エレウォンの20ドルスムージーがヒットしたのも同じ構造だ。「これを飲んでいる私」に価値が生まれ、SNSでバイラルした。美容領域は特に、この価格心理が効きやすい。絶対的な効果よりも、「私がどう感じるか」という相対的価値が大きいから。

機能から情緒へ、ブランドを転換する

この水は、"ReFa コレクション"の一環らしい。希少素材の探求、伝統技術との融合、クリエイターとの協業——主力商品ではなく、ブランドアクションに近い。ReFaは美容機器として高いモメンタムを得ている。しかし現状は、機能的価値が中心。この水の狙いは、情緒的価値への転換。「高い水」を通じて、ReFaを機能を超えたブランドに昇華させる。価格から、ブランドエクイティを作る挑戦。

プレミアム商品は、ブランド全体を引き上げる

プレミアム商品のブランディング効果とは何か。5,000円の水自体が売上を支えるわけではない。しかし「ReFaは5,000円の水を出すブランド」という認識が広がれば、既存商品の価値も引き上げられる。価格帯がアンカリング効果を生み出す。重要なのは、価格に見合う満足感を設計すること。5,000円の水なら、パッケージ、購入体験、飲んだ後の感覚——すべてが期待を超える必要がある。価格は入り口だが、体験が伴わなければ持続しない。

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源泉かけ流し!今週のマーケティング関連トピックス(今週は19個ご紹介!)

タンパク質ブームに乗ったプロテインドリンクが、スターバックスの業績回復に貢献

アメリカのスターバックスでは任意のドリンクにプロテインを足すことができるらしい。
これは日本でもやって欲しいですね~
特に来店頻度の多い顧客にポジティブに受け入れられているとのこと。
日常での積極的な栄養素摂取が重要になる中で、日常接点のスタバでプロテインが「足せる」ことがポイントか。

物価上昇の中で追加開催 創業50周年にちなんで価格据え置き約50%増量 「盛りすぎチャレンジ」を実施

ローソン「盛りすぎチャレンジ」がマーケティング施策としてシンプルかつ超強力な理由を解説。
ローソンの「盛りすぎチャレンジ」は、3つのことを同時に実現している「一石三鳥」な施策なんです。
1. 価値が一目で伝わる
ボリュームが上がっている。それだけで「お得」で「すごい」が視覚的にも概念的にも瞬時に伝わる。シンプルで強力。
2. 定番商品を強化する
新商品連発はブランドを疲弊させる。一方、既存商品の増量は定番に目を向けさせ、ブランドを強化する。いつもの商品がより魅力的に見えてくる。
3. ツッコミどころを設計している
ローソンは増量を「50%」と表現している。だが実測値は50%を超えていることがほとんどだ。
これは意図的にやっているはず。「50%って言ってるのにもっと入ってる!」「お得すぎる」「バカすぎる」。SNS時代、ツッコミの余地を残すことが話題化の鍵になる。

米国老舗カメラ「コダック」が、アジアで100店舗のアパレルブランドとして“復活”したワケ

カメラブランドのKodak。
スマホやデジカメに押されて倒産のち復活。大幅に事業は縮小したが再上場。
そんなKodak、実はアジアを中心に「アパレルブランド」として復活していることを知ってますか?
その震源地は韓国。2020年に韓国で始動した「コダックアパレル」が若年層に人気。いまやアジアに100店舗。先日日本にも上陸。
そもそも再上場したコダックは、KodakブランドをIPとして展開するビジネスにフォーカス。
その中で韓国の会社がライセンス事業として展開し、大成功。
若年層ではコンデジやインスタントカメラが着目されているように、レトロがブームに。
そこに古いカメラの象徴であるコダックがド真ん中のブランドとして評価されているとのこと。
実際に、ソウルのヒュンダイ百貨店で店舗を見ましたが、Kodakの特徴的な黄色を活用したカワイイデザインはかなり「今っぽい」。
単純にコダックロゴや色を使ってるだけでなく、写真というイマを切り取るノスタルジーや、フィルム写真の創るカルチャーを明確にリスペクトしたストーリーもあり、よくできた設計です。

JTの加熱式たばこ、劣勢跳ね返す静かな革命 業界「万年3位」返上へ

TVerを見ていると夢にでるほどJTの加熱式タバコ、Ploom AURAのCMを見てる人が多いんじゃないだろうか。
そんなPloomブランド、この4年間で業界シェアを10ポイント以上高めており好調。
gloを抜いて2位が狙える位置に。
Ploomの動画広告はバリエーションめっちゃ多く、PDCA回してる感あります。

最新画像生成AI「Nano Banana Pro」は文字ぎっしりの“霞が関パワポ”も作れる? 実際に試した

Nano Banana Proのクオリティ、メチャクチャスゴいですね。
画像のパワポ、実はNano bananaで作ったパワポ風画像なんです…
もとにしているのは、かなり複雑なブランド論の英語のニュースレターで、それを翻訳してさらに戦略コンサル風のパワポに内容を構成し出力、という指示。
日本語もしっかり。

秋の睡眠の日(9月3日)を前に「ネスカフェ 睡眠カフェ」と、トヨタ開発の戦略的仮眠ツール「TOTONE」が初コラボ

ネスレが新提案するのは
「コーヒーを飲んでからの短い仮眠」=コーヒーナップを提供する「睡眠カフェ」コーヒーにはカフェインがあるのでは?と感じるが、効いてくるまではタイムラグがある。
15-20分の仮眠にはちょうど良いって話みたい。
あえて仮眠にコーヒーを活用するって発想面白い。

Box-Office Duds Are Becoming Streaming Hits・興行的に失敗作だった作品がストリーミングでヒット作に

映画の興行収入ではイマイチだった作品が、動画配信サービスでは人気になる、そんな逆転現象が起きている。
アメリカの興行成績において『マダム・ウェブ』はMarvel作品でも大失敗の部類だった。
が、『マダム・ウェブ』はNetflixにおいては配給のSONY作品で最も視聴された映画にもなった

シップス、買い取り再販「公式古着」 パタゴニアは新品と同じ売り場に

フリマアプリやリユース店ではなく「公式古着」が拡大中。
世界的にはブランド公式での古着買取→古着販売が増加中。
買取と引き換えにクーポンやポイントを付与すれば、8割以上が再来店するらしい。
顧客との関係性を長期化するための手段としての「公式古着」。
サステナブルでもCRMでもある。

英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった

パブの本場、イギリスでは「パブ離れ」が深刻化。次々閉店しているとのこと。
原因はやはり若年層を中心としたアルコール離れ。
昔ながらのパブはカウンターにランダムに並んで、注文を実行する…のが当たり前だったが、この方式がちゃんと並ぶ日本式に変化してるとのこと。
パブにも規律が導入。

米国で「従順な専業主婦」願望、仕事と家事両立に疲れ伝統回帰

アメリカでは1950年代に主流だった専業主婦が素敵な存在として復権。
TikTokなどSNSでは「トラッドワイフ」のタグが人気で、女性活躍の場を家庭を守ることだ、と主張する層が増加中。
リベラルの伸長と逆方向、保守化や反エリート思想の流れをくむこの動き。キャリア重視思考ではない生き方の肯定。

#LE_SSERAFIM 東京ドーム公演で #アリナミンメディカルバランス ソーダ 風味配布決定!(数量限定)ライブ中に推しを見逃さない!アリナミンを飲んで、集中力をキープしよう!✨

LE_SSERAFIMの東京ドーム公演でアリナミンのサンプリングやってました。
面白いのは「推し活にはアリナミン」という切り口での訴求。
このアリナミンは効能としてのポイントが集中力の維持・改善。なので「推しの晴れ舞台を見逃さない」ならアリナミン、
という文脈を作ろうとしていると。面白い。

セブン、ブラックフライデーで「黒い春巻き」 揚げ物半額に コンビニ各社も注力

セブンイレブンのブラックフライデー商品。
ブラックフライデーと言えばセールのイメージだが、セールだけでなくセブンイレブンのアプローチは「黒」と合わせた限定商品の展開。
今年はコンビニだけでなく、インスタントヌードルなども黒をフィーチャーした商品を展開。
「黒い季節」として定着?

若者に「ホラー」ブーム お化け屋敷は「恐怖の館」から「体感の場」へ

ホラーブームが来てます。
インディーゲームから映画になり異例のヒットをしている「8番出口」だけじゃなく、企画展やホラー小説も好調。
実はホラーブームは世界的なもので、ハリウッドではホラー映画も続々公開されているし、韓国でもK-ホラーとして独自路線の人気が生まれている。

就職せずに自己資本で暮らすメソッドを起業して21年掛けて年商950億円になった話

自己資本で起業し、21年掛けて年商950億円になったクラスメソッドの、今に至るまでの様々な試行錯誤の記録。
メチャクチャ面白いです。
あらゆるしくじりと、地道な仕込みが網羅されていて、
大きな仕組みを作るまでの足跡の解像度が(当然ながら)非常に高い…
1つの本に出来そうな戦いの歴史。

SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2025

SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2025のファッション部門。
TOP2は
・耳つぼジュエリー
・ボディジュエリー
どちらも「つけはずし」が可能な、直接体に取り付けるジュエリー。
ピアスやタトゥーなどを彷彿とさせるが、恒久的でなく簡単に使える手軽さがポイントですかね。

全席無料なのに売り上げは過去最高の1.8億円!海外からも海外からも注目される団体の裏側に密着! 業界の異端児「九州プロレス」が熱すぎる!!

全席無料で年間50興行もやっているのに、売上は1.8億円もある「九州プロレス」。
基本的に売上は九州の地場事業者の協賛金なんですねえ。
なんと今は元WWEのTAJIRIもいるんだとか。
地域密着で家族が楽しめるエンタメとしてのプロレスの再発見。

Netflixが米に初の常設施設 実写版「ワンピース」の謎解き、IP多角展開

あのNetflixが「現実」世界に進出。
フィラデルフィアのショッピングモールにNetflixの実店舗がオープン。
敷地内には
・インタラクティブゲーム
・Netflixオリジナル番組を元にした没入型の部屋
・200席の劇場
・Netflixの番組をテーマにした料理を提供するレストラン
が設置。
家だけでなく、外にもNetflixの接点を創り出す試み。単なる動画配信サービスに留まらず「あらゆるエンタメの集積地」を目指すNetflixであるならば、現実にも顧客接点があるべきという考え方。
もちろん、WEB上での接触よりも、オフライン店舗での接触の方が強いエンゲージメントが得られる。
全米で70店舗にまで増やす想定とのこと。

「茶色じゃないカレー」が100万個突破 ハウスが“色”にこだわった理由

カレーと言えば茶色ですが、ハウスはあえて「色でくくったカレーシリーズ」を発売。3か月で100万個とかなり好調です。
近年は一般層も当たり前にXやInstagramで写真を撮ってシェアする層。その美的感覚は仮にシェア行動をとらなくても「見え方」が価値観に加わっているということ。

SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2025

SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2025の体験部門は「小さく個性を楽しむ」ものが揃っている。
ガチャガチャの景品のめじるしアクセサリーをリップや傘につけたり。
ぬいぐるみをカバンにチャームとしてつけたり。
ブレスレットを作ったり。
ファッションのワンポイント×自分らしさを表現する体験。

***

海外現地調査レポート:規制の産物ながら、ノルウェー1位の顧客満足度。ノルウェー国営酒屋Vinmonopolet(ヴィンモノポレット)

北欧は様々な角度で「進んでいる」と表現されますが、アルコール類の規制でも先進国となっています。特にノルウェーは厳しい酒類規制がされており、例えばアルコール類の広告は一切禁止、そしてアルコール度数4.7%以上のお酒は決められた国営の酒屋でしか販売することができない、という世界でもトップクラスの厳しさです(レストランは提供可能です)。

微アルの商品なら町中のコンビニやスーパーでも売れるらしいのですが、実際にノルウェーの首都、オスロのコンビニやスーパーを見ていても売っているお店はかなり少なかったです。

そんなノルウェー唯一の国営酒屋Vinmonopolet(ヴィンモノポレット)はノルウェー全国に300店舗近い店舗網を構えるチェーン店です。こうした厳しい規制の中で酒を売る国営企業、と聞くと、国民には愛されていないように感じるかもしれませんが、実は2023年度のノルウェー国内における満足度調査で全ノルウェーで運営する企業の中でも1位を獲得するなど「愛されている」規制産業の店なのです。

例えば品ぞろえ。実際に行ってみると品ぞろえは小さ目の店でも非常に充実していて、フラッグシップ店だと世界でも類を見ない圧倒的な品ぞろえです。この秘密は営利を追求しない国営企業ならではで、要は利益を追求するために利幅が大きいものばかり仕入れたり、あまり売れないマイナーな商品を仕入れなかったり、ということがないんですよね。実際、この店自身も「味・スタイル・価格などあらゆる嗜好に応える世界最高水準の品揃えを目指す」と宣言しており、規制されているからこそ、適切な酒への適切な量のアクセスが守られるように、機会を平等にしているんです。さらに地域ごとでの品ぞろえの自由も担保されており、地域性を生かした仕入れが行われているとのこと。

また、ただ売るだけでなく、さまざまなサービスも優れています。実は規制産業「だからこそ」ここで働く人材は徹底した人材育成と接客教育がなされているんです。各店舗のスタッフは様々なお酒に関する教育を受けており非常に詳しい、さらに社内教育プログラムでテイスティングなどの研修も受けているとのこと。「必要十分の飲酒機会の中で、その限られた飲酒タイミングが最高の体験になるようにアシストする」のがこの店の店員の指名であり、規制するからこそできるだけ不便にする、のではなく、最高の体験を作ることにより「お酒をしっかりと自分流に楽しむ」ことを奨励する。結果的にノルウェーのアルコール消費量はヨーロッパ平均9.8リットルと比べて7.5リットルとかなり低く、消費量の最適化にある程度成功していると言ってよいでしょう。

ちなみに酒類が規制されているから価格が高いのか?といえばそんなこともありません。この企業はそもそも国営で利潤を追求していないため非常に利幅を低く売っており、ノルウェー自体は世界トップクラスに物価が高いにも関わらず、高級ワインなどはヨーロッパでノルウェーで買うのが一番安い、という逆転現象も起きているらしいです。ワインの好事家はノルウェーにあえてワインを買いに来たりするのだとか。

規制をするといっても「最高の体験」を提供することによって、結果的に節度ある消費を社会から促していく。優れたサービスこそが持続可能性のある社会を作りだす、そんなヒントをもらえたお店でした。ちなみに実際にオスロで行ってみたのですが、海外の人間である私に対しても店員さんは非常に優しくノルウェーのお酒について説明してくださり、素晴らしい体験でした。最近ではノンアルコール飲料の品ぞろえも非常に充実しており、お酒だけでなく、すべての人がちょうど良い飲用の機会を作れるような手伝いもしてくれるようです。

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明日から効く!マーケティング/ブランディング関連書籍レビュー

勝負眼 「押し引き」を見極める思考と技術 藤田晋

私のファーストキャリアは広告代理店の電通なんですが、大学生のころからあこがれていたビジネスパーソンがいて、それがサイバーエージェント創業者の藤田さんでした。そのきっかけが彼がアメブロで更新していた内容をもとにまとめた『渋谷ではたらく社長の告白』だったんですよね。一般的な大企業とは全く異なるベンチャー企業の世界。しかも時代はネットバブル、ライブドア事件が起きていたようなあの時で、そんな中ど真ん中で戦う藤田さんの生の言葉はとてもリアルで、蠱惑的な魅力がありました。なので私の中にはいつかベンチャー(スタートアップ)にかかわってみたい、という気持ちがあり、電通時代はスタートアップを多く担当、さらにメルカリに転職し自分がスタートアップに入り…とキャリアを歩んできていて、そのきっかけをくれたのはまさに藤田さんなんです。

そんな藤田さんの新刊なら読まないわけにはいかない、と手に取ったのがこの本。結論から言えば、面白かったです。変わらない冷静な視点に加えて、この20年勝ち残ってきたことによるまさに勝負に勝ち、あるいは生き残り続ける力として結実したエッセンスを感じられる内容。やや私が思い入れがあることは否めませんが、ビジネス書というよりも、勝負の中での押し引き、勝ち方という視点で見ると有用な本だと思っています。

もとは週刊文春の連載なので、ビジネス書としての堅さや理論建て、あるいは重厚さを求めると肩透かしだとは思うのですが、生々しいビジネスの環境下におけるサバイブ、という観点では非常に面白い。ドン・キホーテ創業者安田さんの『運』という本と同様の楽しみ方ができる本かな、と思いました。

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偏愛!なんでもインプットコラム

企業の「人格」は経営者に宿る — ハッシュタグ的キャラクター設計のすすめ

実はこのニュースレターだけでなく、Podcastもやってるんです。話し手はわたし、なんぼーと元テレビ東京のアナウンサーで今はスタートアップの役員を務める大木優紀さん(過去、令和トラベルのブランディングをお手伝いしており、その時からの関係でお願いをしました)。実は20回近くやっているんですが、先日初めてゲストに来てもらいました。

ゲストに来ていただいたのは、株式会社しんめの代表、下村さん。PRのエキスパートである下村さんとのPodcast収録から、一部を抜粋してコラムにしています。こんな感じのことを話しているんだな~と思っていただき、興味あればぜひ下記から聞いてください!耳だけ、ながら聞きなんかもおすすめです。

この回では2025年のPRトレンドから実務的なノウハウまで幅広く話したのだが、その中で私の中に特に印象に残ったテーマがある。それは「企業の人格化」。今回のコラムでは、その議論の一部を抜粋して紹介します。

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なぜ、あるブランドは熱狂的に語られ、あるブランドは誰にも言及されないのか。

商品の品質でも、広告投下量でも説明がつかない差がある。その答えの一つが「人格」。「無機質なものに人は共感しない」というシンプルな事実。人間は、温度があるものに対してしか言及したくない。だから企業やブランドにも「人格」が必要になる。この話自体は、別に新しくはない。ブランドパーソナリティという概念は昔からある。だが、いま改めて注目すべきなのは、その人格が「経営者個人」に強く紐づく傾向が加速しているということ。わかりやすい例がイーロン・マスクとジェンセン・ファン。テスラやNVIDIAは、客観的に見て技術力も事業規模も圧倒的な企業だ。だが、世の中で語られるときに、企業そのものと同じくらい——あるいはそれ以上に——経営者個人のキャラクターが話題になる。イーロンの突飛な言動、ジェンセンの革ジャン。それが企業のモメンタムを作っている側面は否定できない。もちろん、彼らは極端な例ではある。だが、スケールを小さくしても同じ構造は見える。スタートアップでも、数十億円調達している企業でも、結局は経営者の顔がブランドの顔になっている。その人格をどう設計するかも、PRやブランディングの重要な仕事になっている。

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では、経営者の人格をどうやって設計するのか。下村さんが実践しているのは「ハッシュタグ的に整理する」というアプローチ。

この社長はどんな人として見られたいのか。「誠実」「スピード感がある」「ちょっとつかみどころがない」といったキーワードを、クライアントと一緒に言語化していく。抽象的な企業理念ではなく、人物としての印象をタグ付けしていく感覚に近い。

面白いのは、このタグが必ずしもポジティブなものだけではないということ。「ちょっと変わっている」「クセが強い」といった要素も、人格を立たせる上では武器になる。完璧な人間より、どこか引っかかりがある人間の方が記憶に残るのと同じだ。

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この文脈で考えてみると、例えば日本のスタートアップではNOT A HOTELの浜渦CEOを思い浮かべる。彼のnoteやSNSを見ていると、高校時代の話、バイトで苦労した話、借金した時のエピソードなどが語られている。2度目の起業で成功を収め、華やかな事業を展開している「キラキラした経営者」という見せ方もできそうだが、あえて「地方の普通の男の子だった」という側面を出している。「ずっとすごかった人じゃない」という見せ方がポイント。その人間臭さが、社員の求心力にも、顧客の共感にもつながっている。

私が創業者のnoteを手伝う際、彼が必ず提案するのは「失敗談を入れましょう」「生まれの話から始めましょう」ということ。いわゆる「エモい創業ストーリー」を演出したいわけではない。人間性を漂わせることで、その人物の輪郭がくっきりする。そして経営者の輪郭がくっきりすると、会社全体の人格も立ち上がってくる。

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逆に言えば、人格が見えない企業は厳しい局面になるかもしれない。どれだけプロダクトが優れていても、語られにくい。口コミが生まれにくい。SNSで言及されにくい。広告を打てば認知は取れるが、広告を止めた瞬間に忘れられる。情報として処理されるだけで、感情が動かない。

「この会社ってどんなキャラクターだっけ?」と聞かれたとき、誰も答えられない状態は危険信号。そんなとき、経営者を「ハッシュタグ的に」捉え直してみる。どんなタグがつく人物なのか。そのタグは、外部の人間からも認識されているか。PRの仕事は、その人格を言語化し、見せ方を設計し、語ってもらうこと、も大切な仕事になってきているのかも。。

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今回はPodcastで話した内容の一部を切り出し編集してみましたが、実際の収録では、PRの「ストック vs フロー」の話や、災害時の即応体制、メディアリレーションの作り方など、もっと幅広い話をしています。興味があればぜひ聴いてみてください!

Spotify

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今週の1曲

『トレモロ』米津玄師 RADWIMPSカバー
https://www.youtube.com/watch?v=pwPpqgn-3lw

私は1985年生まれ、40歳なんですが大学生や社会人序盤にめちゃくちゃ聞いていた青春の曲がRADWIMPS。完全に世代にぶっ刺さっていますが、先週リリースされたRADWIMPSのカバーアルバム、めちゃくちゃ話題になっていますよね。サブスク上のチャートは完全にRADトリビュートアルバムが席巻しています。

トリビュートとしては起用アーティストが幅広く、米津さんやVaundy、ミセスといったど真ん中人気アーティスト、ずとまよやヨルシカを抑えつつ、宮本浩次やハナレグミなどの上の層向けも入れ込んでいてかなり意識的に全方位に刺さるようなアーティスト選定が光ります。

個人的には『閉じた光』がRADWIMPSで一番好きな曲なので、ぜひ第二弾もやってほしい。

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最後までお読みいただきありがとうございます。もし内容が良ければ登録ボタンより、次回のニュースレター配信をお待ちください。

最後に!

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