スターバックス苦境の理由と、未来都市、中国・深圳の先端商業施設レポート 25年9月第5号

今週は15個のニュース、書籍2本、中国の最新複合施設をご紹介。今週は8,138字でお届け。
南坊泰司 2025.09.30
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マーケティングトレンドインプット 今週のクイック解説3選

スターバックスが苦境になった背景と、「サードプレイス」の再建へ向けた取り組み

サードウェーブコーヒーの覇者、スターバックスが世界的な業務不振に直面。なんと既存店売上高は6四半期連続で減少中。不採算店舗の閉鎖や人員削減が進んでいる。一方で新CEOが掲げる方針は「Back to Starbucks」。ブランドの原点となる「サードプレイス」を取り戻す改革をスタート。

スターバックスブランドの原点とは「手ごろな空間でくつろげる第三の場所」であること。このブランドの魂である居心地の良さが、ドライブスルーやモバイルオーダーアプリでの利便性を高めるためのデジタル投資によって毀損されてしまったと経営陣は考えている。モバイルオーダーやドライブスルーは、短期的には売上と効率を上げたが、長期的には「ただコーヒーを受け取るだけの場所」へとブランドを矮小化させ、顧客との情緒的な繋がりが断絶してしまった。

スタバブランドの核はあくまで居心地の良さに基づく顧客体験であり、デジタル投資=悪というよりは、あくまでその体験を加速するものである、また原点としての居心地の良さは時代とスタバのパーセプションに応じて変化していかなければいけない、ということに直面したということ。スタバに強烈な味を求めていく人はいない。スタバの核はやはり店なのだ。

WEB時代になぜ物理雑誌の『地球の歩き方』が受けるのか?深くコンテンツを編集できる「編集力」の普遍的な力

紙の旅行雑誌である『地球の歩き方』がどんどんと幅を広げて常にニュースを巻き起こす存在になっている。圧倒的な編集力を持つ地球の歩き方は信頼できる一次情報が集約された場所。さらに情報を羅列するのではなく、その背景にある歴史や文化といった周辺情報を提供することにも定評がある。

つまり読み物として面白いだけでなく、旅の体験を更に価値を高められるデバイスになっているということ。当然ただ読むだけでも面白い。今や世界の情景はYouTubeやTikTokで検索すれば容易に探せる。だからこそ、画一的なバズ情報の羅列では得られない質の高い情報源としての地球の歩き方の価値が高まっているということなのだろう。

面白いのはそんな地球の歩き方自体がIPとしてブランド化しているということ。なので、ブランド×ブランドのIPコラボとして『ジョジョの奇妙な冒険』や『月間ムー』とのコラボが成立したり、地球の歩き方グミが発売されたりする。編集力そのものが価値を持っているという非常に現代的な事例。

日本の小説がこの数年で「村上春樹以外」も海外で評価され、爆売れするようになった理由とは?

柚木麻子の『BUTTER』や王谷晶『ババヤガの夜』、あるいは小川洋子や川上弘美など幅広い作家が現在特に英語圏で人気になっている。実際欧州の本屋に赴くと、BUTTERなどは平積みされていたりする。

参考↓実際のロンドンの本屋での取材。TBS CROSS DIG with Bloombergより。

https://www.youtube.com/watch?v=cEkJK76-XXo

これだけ日本文学の多様性が伝わり更に一般にも、文学賞にも評価されるようになった理由を分析している記事が面白かったんです。大きく2つのきっかけがあり、1つは超高学歴の若手日本学者が職業翻訳家の道を選んでいるということ。圧倒的に高水準な人的資本のバックアップがあるんですね。もちろん海外の日本学者は一定数いますが、その多くは大学教授を目指していた。これらの人材が学術界の閉塞感を受け、よりクリエーティブで評価もされる翻訳の世界に参入していることが大きい。

これらのハイクラスな人材はもちろん、卓越した日本語能力と文学センスの双方を兼ね備えているわけで、それが優れた翻訳を創り出し、結果的に質の高い本になって受け入れられているということ。

もう1つがサンフランシスコの出版社「ハイカソル」の存在。日本文学の多様なジャンル、文学だけでなくSFやバイオレンスなどを体系的に英語圏に広げる専門出版社である。単純に1人の作家というよりも「日本文学」という面で紹介することで、全体が受け入れられるようになった。

そしてこの数年で欧米の著名な文学賞(エドガー賞、ダガー賞、国際ブッカー賞など)を日本文学が席巻。プライズという分かりやすい評価を得ることで、更に日本文学への注目が進行するポジティブスパイラルが起きている。

***

源泉かけ流し!今週のマーケティング関連トピックス(今週は15個ご紹介!)

ドジャースよりチケット入手困難?アメリカで旋風巻き起こす野球チーム「サバンナ・バナナズ」 打って踊って宙に舞う…本拠地で見た人気の理由は「ファンファースト」にあった

発足当初から常に完売、「全米一チケットが入手困難なチーム」があるらしい。
名前は「サバンナ・バナナズ」
野球をアレンジした独自ルールでプレーし、選手は歌って踊る。更に竹馬に乗ってプレーする人などもいて、野球を題材にしたエンタメショー。
なんとTikTokは1,000万フォロワーいるらしい。

サイゼリヤ松谷秀治社長「朝食の全国展開、27年8月期以降に」

遂にサイゼが一部店舗で「朝食」に挑戦。
「朝サイゼ」
AM7-10時に200-400円で焼きたてパン&ドリンクバーがつく。
そもそもサイゼリヤのオープンは昼時から。営業時間を広げることは店舗当たりの売上増につながるか。

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続きは、7594文字あります。
  • 海外現地調査レポート:街のメディア化×先進ブランドとの共振がつくる暴力的なプレゼンテーション・深圳 万象天地の衝撃
  • 明日から効く!マーケティング/ブランディング関連書籍レビュー
  • 1年後に効くかも?あなたにおススメなインプット
  • 今週の1曲
  • 最後に!

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