企業のKPIを物語化する広告契約の戦略PRと、パ・リーグのマーケティングはセ・リーグよりも一歩先な理由 25年12月第1号

今週は8個のニュース、書籍1本、サンフランシスコのレストランをご紹介。今週は10,455字でお届け。
南坊泰司 2025.12.02
誰でも

忙しいあなたのためのマーケティング情報サプリメント。週に一度、厳選されたトレンドと洞察をまとめていきます。これを読めば「主要なトレンドをキャッチできる」、そういった想いで届けてまいります。まずはご登録をお願いいたします。

マーケティングトレンドインプット 今週のクイック解説3選

さらば青春の光と、マウントレーニア。オープンに売上連動型出演契約を結ぶ「事業KPIを物語化する」新型PR

何が起きたか

森永乳業のマウントレーニアが、さらば青春の光・森田哲矢との「売上連動型出演契約」をXで発表した。公開された"契約書"には、11/3-12/28の売上前年比で翌年の露出が段階的に変わると明記されている。

  • 大幅減=契約終了

  • 減少=声のみ

  • 横ばい=WEB企画

  • 微増=渋谷・難波ポスタージャック、アドトラック、石尾"解雇"

  • +11〜15%=TV-CM(海外ロケ)

  • +16〜20%=限定パッケージ・コラボCM

  • +21%超=新味開発・海外旅行

「頑張れば報われる」を可視化した

通常、広告契約はタレントにとって締結時点で仕事がほぼ終わる。反応が良ければ契約継続もあり得るが、「どれだけ頑張るか」がKPIになることはまずない。 旧ジャニーズファンなどは広告契約時に商品を大量購入することがあるが、あくまで自主的な動きだ。今回は違う。森田が頑張れば頑張るほど報われることが明示され、ファンにも「頑張りがい」が生まれた。 実際、ファンは「毎日1本飲めるか挑戦 22日目」と日数カウントで購入報告し、「#マウントレーニア購買運動」「#さらば森田に地上波CMを」といったタグも自然発生している。

「暗黙の了解」を話題化のタネにする

あらゆる構造が可視化される時代だ。「売れたら契約が続く」「地上波CMはタレントにとってご褒美」という業界の暗黙知を、あえて公開した。売上というKPIすら、リアルタイムで状況が変化するコンテンツになる。推し活の感情構造を、マーケティングに転用した設計だ。

リスクも明確にある

マウントレーニアは過去に森田を二度起用しており、さらばの文脈を正確に理解している。だが、温度感を間違えればファン感情の過剰利用になる。期待を糧にした仕掛けは、着地を失敗すれば話題化が逆回転する。年内の着地まで含めて、このキャンペーンの評価は決まる。

MTGのリカバリーウェアReD 後発ながら爆速で10万枚を売る「病院特化型戦略」

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/01761/

MTGの新ブランド「ReD」。22日で10万枚突破の裏にあるチャネル戦略

リファ、シックスパッドのMTGが2025年7月にローンチしたリカバリーウェア「ReD」。発売22日で出荷10万枚を突破し、いまも売れ続けている。

圧倒的な低価格

リカバリーウェアのトップブランドはTENTIALのBAKUNE。価格帯は2-3万円だ。一方、ReDは3,960円。インナーウェアとパジャマという違いはあるが、価格差は圧倒的だ。高価格帯ブランドを展開してきたMTGにとって、マス領域への挑戦となる。

「安かろう悪かろう」をどう払拭するか

低価格は魅力だが、2-3万円が相場の市場に4,000円で参入すれば「安かろう悪かろう」と見られるリスクがある。MTGが最初に開拓したチャネルは、なんと病院とクリニックだった。リファはプロの美容師に推奨されてヒットした。その成功体験を踏まえ、「医療の現場に置かれている=医療が認めたウェア」という心理を狙ったわけ。

30人体制で医療機関を攻めた

当然ながら医療機関は簡単に新商品を入れない。MTGは営業・販促組織を30人規模まで強化し、専任営業で開拓した。医療機器としてのエビデンスも立証。結果、病院・クリニックの販路を獲得した。病院・クリニックで売れている=効果がありそう、というイメージを直接顧客に形成するだけでなく、病院・クリニックでそもそもインナーウェアは売られていることはない。つまりその販路の中では圧倒的なファーストチョイスになっているということでもある。 さらにこの実績は副次的な効果も生み出している。病院に導入されているということで、家電量販店、スポーツ用品店、調剤薬局など他チャネルへの提案が通りやすくなり、新商品で難しい販路開拓が結果的に広がりやすくなったのだ。

4Pの相互作用を設計したローンチ

低価格という強力な機能訴求。その低価格を信用させるために、プロモーションではなく販路で信頼を獲得する。Price、Place、Promotionが連動した、秀逸なローンチ戦略だ。

アルゴリズムは音楽を失敗させたのか?

https://www.theverge.com/column/815744/music-recommendation-algorithms

アルゴリズムは音楽を失敗させた

The Vergeが「The algorithm failed music」というコラムを出した。音楽レコメンドアルゴリズムはノイズをカットしてくれるはずだったが、結局スロップ(低質なコンテンツ)を出してきただけだ、というのがコラムの要諦。

アルゴリズムに頼るほど、聴く幅は狭まる

このコラムのネタ元であるMIDIA(英国の音楽専門コンサルティング・ファーム)の調査によれば、レコメンドアルゴリズムに頼るほど聴く音楽の幅が狭まる。今の16-24歳は上の世代よりもお気に入りアーティストが増える機会に乏しい。Z世代はTikTokで曲を知ることが多いが、そのアーティストの他の曲を深く深く掘ることは稀であるとデータにも出ている。

さらにことを難しくしているのは、SNSでの音楽体験が「音楽全体」ではなく「バズの瞬間」に紐づくこと。消費者の18%は新しい音楽を聴いてもソーシャルフィードから離れず、離れる頃には33%がその曲名すら覚えていない。Spotifyでバズ曲を聴いたら「バズった瞬間」を思い出してTikTokに戻る、という逆流すら起きている。(例えば「倍倍FIGHT!」の全曲を皆さんは知っているだろうか?) SNS側はユーザーを留めておきたい。だから「音楽」ではなく「バズの瞬間」をたくさん届ける設計になっている。

ディグ文化は若者から消えた?

かつて音楽はレコード屋・CD屋、友人からのレコメンド、ラジオなどから発見されていた。一方でいま、サブスクは聴き放題で、好きそうな音楽を次々レコメンドしてくれる。そこから抜け出す理由は基本的にはない。CDショップは減り、レコード店に行くのは好事家だけ。新しい音楽に出会う物理的な手段も機会も消えているのだから仕方ないとも言える。 結果、ディグる能力は若年層には育ちにくいのが現実。もちろん、音楽サービス上には多数の音楽がある。ちゃんとプレイリストをあさったりすればディぐれるけれど、自動で垂れ流してたらなかなかそれは実現しない。

アーティストも変わった

アーティストはフルアルバムをなかなか出さなくなった。EPか、ないしはシングルを次々リリースする。曲はいま1曲ごとに効かれており、アルバムの流れを意識して聞く人は大きく減っている。CDを入れ替える手間もないから、1曲へのスティッキネスも下がるのは当然だろう。

アルゴリズムが全否定されるべきではない

ただ、昔が良かったという話でもない。昔も流行った曲は流行っていたし、大衆にディグ文化があったわけではない。

アルゴリズムはライトユーザーには機能する。どんどん新しい音楽に触れられる。問題は、中堅〜深掘りユーザーへの最適解がないことだ。好みを学習するほど、似た曲しか出てこなくなる。

セレンディピティをどう設計するか。音楽テクノロジーの次の課題はそこにあるのかもしれない。

***

源泉かけ流し!今週のマーケティング関連トピックス(今週は8個ご紹介!)

ミニシアター1年で黒字 東京・墨田のストレンジャー、上映数3倍

東京都墨田区のミニシアター「ストレンジャー」
赤字からわずか1年で黒転。その秘訣は超地道な延べ来場者数の最大化。
映画館のカギは当然、回転率×来場者数。
キャパを増やし、客が増えればよい。
そのために「あさイチ9時台」の回を新設し、1日の上映本数を倍増。さらに1週間前まで上映作品を柔軟にし、人気作品は長く、話題作を取り入れた。
こうして接触頻度を増やし、PDCAのスピード感を早めることで来場者は大きく増加。さらに併設カフェで多くイベントを開催し、映画を見ない接点も増加。
愛されるブランドを生かして、グッズも展開することでより収益も増加。
ポジティブ循環が回ってます。

謎キャラ「ブレインロット」感染注意 脳が腐る?夢中の子供に親困惑

ブレインロットって知ってますか?
その名の通り脳が腐るような「意味のない」ミームのこと。
そしてついにAIが生み出したブレインロットなキャラクター、イタリアンブレインロットが世界的に人気。
このシリーズ、誰が著作権を持っているわけでもないらしい…ので増え続け、そしてグッズもどんどん出ているらしい。
意味がないから、グローバル。
意味がないから、ラクに楽しめる。
意味がないから、ばかばかしくて面白い。
とはいえ果たして本当に意味がないことばかりでよいのか?という一抹の不安も。
ブレインロット系のキャラや動画の多くはショート動画でのミーム的な流行でSNSアルゴリズムと相性が良くバイラルしまくる。
ミームとショート動画とSNSの産物、ブレインロットの流行は簡単には終わったりしないものだろう…

出版不況なのに「パズル雑誌」はなぜ売れる? 1,000万部超の発行部数を支える「差別化戦略」

雑誌不況の中、パズル雑誌は売れ続けている。
2024年の総発行部数は1,067万部。なんと売り上げは右肩上がり。
シニアを中心に売れ続けている。「ご褒美」としての懸賞企画も人気で単月で20万通も応募が来るとのこと。
頭を使い、報酬をもらう。インタラクティブなコミュニケーションなのかも?

Google経由のサイト訪問、日本でも3割減 AI要約の浸透で

Google経由でのサイト訪問数が日本でも3割減少しているとのこと。
AI Overviewが主な原因とのことだが、今後は
・そもそも検索行動自体をAIで完結する
・AIブラウザを活用する
などの行動でさらに「ググる」行動自体が減っていくことは不可避かなと感じます。

ワーナー・ミュージックとSunoが提携 契約アーティストの楽曲でAI生成音楽が可能に

ワーナーミュージックとsunoが提携し、契約アーティストの楽曲でAI生成音楽が可能に。
AIによるクリエーションの裾野拡大が不可避な中で「AIに使わせない」のではなく、適切な契約の中で二次創作的なAI活用を認めるという考え方。
切り抜き動画で大きくショート動画の世界で接点が二次的に拡大するのは、特に動画コンテンツのヒットにおいては重要な要素になりつつある。
音楽はもともとサンプリングやマッシュアップなど、二次創作的なアプローチは存在していたジャンル。明確に権利関係がクリアな状態でAI活用できるのであれば、アーティストの楽曲の接点拡大を加速する可能性があるよね。あ

電通が家まるごと広告 料理に合う音楽配信、居住者データから提案

遂に映画『マイノリティ・リポート』の世界が再現されるのか。
電通が進出するスマートホームの広告市場。
単に広告を知らせるだけでなく、例えば掃除であれば正しい使用法を伝える中で、洗剤が切れた際にアナウンスし、購入を促す。
顧客のUXと、企業のCRM。このちょうどよいラインに落とし込める?

憧れの人の授業、半年54万円も惜しくない MOSHが回す指名経済

MOSHの展開する「指名経済」。
習い事×クリエイターのプラットフォームMOSH。
英語コーチ、ダンス、ストレッチ、パン作りなど講師の幅は広い。
流入自体はSNSからで、MOSHが提供するのはそれ以外のクリエイターのサービス基盤。
サロンと少しずらして、予約や販売手法など柔軟に対応可能なのが強み。

「よーじや」が京都人を呼び込む和食店 脱・土産物屋を加速

油とり紙の企業から多角化を図り、リブランドもしている「よーじや」。
京都の生産者が作った食材を提供する和食店を四条烏丸にオープン。席には生産者をまとめた冊子、その日の食材の生産者マップなど、京都を盛り上げるブランドとしての立ち位置を明確化するような演出。
飲食は第二の柱を目指す。

***

海外現地調査レポート:Shuggie’s サンフランシスコの超先進的な気候ソリューション型レストラン

先日サンフランシスコに訪れた際、超先進的なコンセプトを実現しているレストランがある、と聞きつけて、実際に潜入調査してきました。そのレストランの名前はShuggie’s。

このレストラン、公式サイトでミッションとして、食品ロス削減は「気候変動対策の中で最もインパクトの大きい手段」と位置づけられており、waste-free future(廃棄のない未来)という言葉を掲げています。アメリカでは生産される食糧の約4割が廃棄されていると言われている中、いかにして食品ロスを削減するか、にTRYしているんです。

サステナブルと言うと禁欲的で辛いものと想像するかもしれませんが、このレストラン、入れば分かるように超“陽気”でカラフルな店内です。環境の厳しい話題だから真面目でいる、ということではなく、あえてバカバカしく楽しく取り組む、それこそが継続につながる、というスタンスなんです。

Shuggie’s の特徴は廃棄をあらゆるサプライチェーンから拾い上げていること、例えば、

・農家からは形・色が悪い、規格外の野菜や果物

・食品メーカーからはミルク製造で出る搾りかすや、チーズ工場で出るホエイ

・小売からは賞味期限が迫ったチーズや売れ残りの魚の部位

など、ありとあらゆる場所からアップサイクル可能な廃棄予定の食品を集めています。つまり無理やりに探してくるというよりも、あくまで様々な食品に関わる事業者の営みから「出てしまった」廃棄食品を集める。これがお互いにとってwin-winになる取り組みに絞っているんですよね。

価格としても「サステナブルだから高い」のではなく周辺のレストランと同水準。あくまで合理的に仕入れをし、変動する仕入れに対してメニューを入れ替えながら、さらにナチュラルワインのボトルショップや、メールベースのコミュニティやワインクラブ、グッズ販売や店舗でのイベントなどの副収入も活用することで、収益性を保つようなチャレンジもしているようです。

実際にいくつかのメニューを楽しんだのですが、それがアップサイクルの野菜や魚だとは感じない味のクオリティで、見た目や味付けも含めてGoodな体験でした。加えてメニューの多くはアメリカの家庭料理の文脈を拾っています。サステナブルを身近にするために「ここでしかできない」料理にあえてしない配慮もありそうです。

こうした話のいくつかは店員さんから伺ったのですが、日本から調べて訪れたと店員にお伝えしたら、喜んで一皿サービスしてくれました。(お腹はパンパンになりました!)ホスピタリティも素晴らしいお店です。

本当の意味でサステナブルであり続けるためにはどうすればいいのか?辛く苦しい倹約でも、禁欲的にやることでも、高額を支払うことでもなく、持続的にその取り組みを続けること。そのためにどうすればいいか?を本気で考えて取り組んでいるShuggie’s 。世界にこうした取り組みをするレストランは増えていますが、その中でもトップクラスに持続性を考えているお店だと感じました。

***

明日から効く!マーケティング/ブランディング関連書籍レビュー

SHIFT解剖 究極の人的資本経営 飯山辰之介

上場10年で売上高が50倍という驚異の成長を誇るシステムテスト企業SHIFT、その経営において特に強みとなっている人的資本の活かし方について実際にSHIFT社から綿密に調査して深掘りした本である。

SHIFTの成長の原動力は再現性を持っている究極の人的資本経営にあると本書は解説する。そもそもSHIFTの事業領域はシステムインテグレーションの中でも特に下流行程であるテストに注力していることにある。この行程に対して会社としては専門性を高め高付加価値化する一方で、人材に関しては標準化し再現性を生み出すことによって強い競争力を実現しているのである。

SHIFTはポテンシャル採用を行っている。つまり未経験者が非常に多い。例えば元警察官、キャバクラ、大工などあらゆるバックグラウンドを持つ人が活躍している。これはテスト工程に詳しいSHIFT者として独自の適性試験を開発し、素養を高精度で確かめるというやり方。さらに「ヒトログ」と呼ばれる独自の人材管理システムも持っており、社員ごとに450項目に及ぶプロフィール、実績データを蓄積。人材に関するブラックボックスを排除し、適切な人事判断を行えるようにしている。入社後は社内独自のスキル認定制度「トップガン検定」があり、試験を通じて実力を証明すれば職責も報酬も高まっていく、という明確な仕組み。

そもそもIT業界におけるエンジニアリングに携わる人の採用は非常に難しく、報酬も高騰している。その中で人材の獲得をポテンシャル採用を可能にすることで異業種から獲得し戦力化する仕組みづくりを行い、そしてその採用者に対して企業へのロイヤリティを高めることでモチベーションを向上・離職率を低下させ、さらに独自の評価制度と試験によってキャリアパスを明確化することによりスキルアップしていく。

属人化を避け、できるだけ再現性ある人材マネジメントを実現するためにすべての制度が整っている。それを支えるのはテスト分野にフォーカスしたからこその事業理解・事業解像度によるもの。全てが理に適っている、本質的な意味で人材を成長ドライバーにする「人的資本経営」についての理解が深まる良書です。

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偏愛!なんでもインプットコラム

なぜパ・リーグのマーケティングは先進的なのか?セ・リーグとの比較から見る全方位的ファンとの接点づくり推進

コロナを機に大きく変化したプロ野球の収益モデル。その中で比較的遅れていたプロ野球のデジタル活用は大きく進化しました。中でもパシフィック・リーグ(パ・リーグ)のデジタル戦略は非常に優れているんですよね。今回はセ・リーグとの比較も行いながら、どんなことをやっているのか?なぜ優れているのか?を深掘りしてみます。

パ・リーグのデジタル戦略の核となっているのが、公式動画配信サービス「パ・リーグTV」。

パ・リーグ6球団主催の公式戦を年間450試合以上ライブ視聴できるこのサービス自体は2012年からスタートしています。今では有料会員数は7万人で推移しており、野球の、しかもパ・リーグしか見られないチャンネルと考えると、かなりの規模感。

更にパ・リーグTVは公式Youtubeを有効活用しており、現在はチャンネル登録者数161万人のお化けチャンネルになっています。2014年に開設→2022年6月時点で100万人達成、と考えると現在の161万人の数字を見れば人気が加速していることが分かると思います。

同Youtubeチャンネルの運営戦略は非常に活発で、各試合の好プレー集や珍プレー集など独自の切り口による動画を1日約15本投稿。年間140試合以上行われるパ・リーグの全試合、公式映像が使えるという強力な資産をフル活用し、圧倒的な物量でファンの毎日を野球色にしています。

面白いのは単純なハイライトやないスプレーだけでなく、特定の瞬間、特定の選手、あるいは監督に注目するなどあらゆる切り口で動画を出しているということ。「ネタ」に強いことでも知られており、SNSで話題になるような決定的瞬間や話題になったことを逃さず動画にしていくスピード感は、まさにいまの高速化するSNSへお手本のような動きをしています。

実際、「このプレーはパ・リーグTV(パテレ)に上がるだろう」という意味でファンがSNS上で使う「#パテレ行き」という俗語がSNSでは観測されるぐらい、パ・リーグファンにとっては必須の存在になっています。しかも視聴者層で、登録者の約38%が18~24歳のZ世代で占められており、13~17歳を含めると24歳以下が全体の約48%。プロ野球人気を従来ファンに留めず、興味のきっかけになる力を持っています。Youtubeに限らず、Xの公式アカウントでもウィットの効いたコミュニケーションを展開。実はあの大バズりした「きつねダンス」の火付け役もパテレであると言われています。

こうしたパ・リーグTV、SNSやパ・リーグ6チーム横断イベントを運営しているのはパシフィックリーグマーケティング株式会社。「個別球団の利益より、リーグ全体とファンの利益にフォーカスする」というスタンスで、パ・リーグ全体の価値向上を追求しているんです。国内のネット配信権や海外向け放映権はPLMが一元的に管理運用しており、従来の日本プロ野球の問題であった、球団ごとの主催試合の映像権利がばらついている問題を解決したのでした。

セ・リーグとの大きな違いはまさにここです。そもそもセ・リーグは最高の人気球団であるジャイアンツを中心に地上波中継による全国露出が当たり前だった背景もあり、デジタル化への動きがパ・リーグより緩やかでした。結果、DAZNで確かに試合は見られるものの、広島カープの主催試合は見られなかったり、ジャイアンツは独自に「GIANTS TV」やHuluでの配信を行うなど足並みはそろっていません。一部の試合は地域ローカル局での放送やCS放送限定となるなど、とにかくパ・リーグTVに入れば全ての試合が無条件にみられるパ・リーグとは大きな差があります。もちろん権利関係が複雑ということは、SNSに話題となるシーンを編集して公式動画をUPすることも難しい。もちろんパ・リーグTVのSNSアカウントのように、ストック的にファンをためていくこともできません。足並みが揃わないことによる新規接点の創出はセ・リーグの場合限定的になっているのが現状です。実際、パ・リーグの観客動員数は2019年比でセ・リーグを上回っています(セ・リーグは微減)

もちろんセ・リーグにおいてはファンが増加し続けるDeNAベイスターズのように(ちなみに筆者なんぼーは1998年以来の横浜ファン)様々なマーケティングに関する取り組みを行っている企業もあるのですが、リーグ全体の取り組みとしてはパ・リーグのアクションは非常に理に適っており、とても魅力的だと思っています。

***

今週の1曲

Official髭男dism - Sanitizer
https://www.youtube.com/watch?v=t-E9h7fJPX4


12/1に発売されたばかりのヒゲダン新曲をご紹介。

ここ数年のヒゲダンはタイアップの強い曲をひたすらリリースしながら、ポップのど真ん中をひた走ってきました。その流れの後にあえて「いま今、純粋に届けたい音をパッケージしたノンタイアップ曲」と説明された曲としてリリースされたんです。なんと、シングルとしては約7年ぶりのノンタイアップ曲。7年ぶりって…衝撃ですね‥

「らしさ」「50%」「Subtitle」などヒゲダンの名タイアップ曲は数あるわけですが、ヒゲダンは近年のウェルメイドなアーティストと同じで、タイアップではしっかりそのタイアップ元への経緯を感じます。その中にヒゲダンとしてのメッセージを織り込むのは職人技なわけですが、ヒゲダンとして超純粋に自分たちが届けたい曲や音、を出してくれたことはファンとしてめちゃくちゃ嬉しいメッセージなわけです。

タイトルの「Sanitizer」はそのまま“消毒液”の意味。ヒゲダンらしく韻を踏み、意味を抑えながら、消毒液メタファーにのせて、あえて「病原菌」や「逆剥け」といったポップではあまり使わないワードを入れてくるのが“らしい”なと感じます。痛みと向き合いながらゆっくりと治していく、そんなプロセスに寄り添う曲なのかな、と自分は感じました。

MVはヒゲダンでたまにある(TATOOとか)メンバーたちのいまの姿を撮影する内容となっていて、パーソナルなテーマをノンタイアップで等身大の姿で描くというこれまでとは異なるスケールの描き方、近さを感じた象徴的な曲だと感じました。単純に曲も良いですし。個人的にはTATOOやShowerといった「身近な世界×身体性」を歌うヒゲダンが好きなので、自分としてはぶっ刺さっています。

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