なぜLove type16恋愛診断はバズったのか?&ブラックサンダーの秀逸なキャンペーン設計とは 25年9月第4号
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マーケティングトレンドインプット 今週のクイック解説3選
LoveType16:なぜこの恋愛診断はバズったのか?

先週から今週にかけて大きくバズっている恋愛診断Love type16。うまくMBTIの成功例とトレースした仕組みになっていて、狙い通り大きく拡散が作れている診断コンテンツとなっています。
診断は本家MBTIよりシンプル目の3分程度で完了、こちらで4つの軸に従って違いがあることで、2×2×2×2で16のタイプが存在することもMBTIと同様です。見せ方についても「ロマンスマジシャン」「ツンデレヤンキー」などのキャッチーな名称+キャラクター絵という構図は同様。
また、4つの軸の設定もうまく、恋人に甘えたいのか、甘えられたいのか。恋愛を現実的に考えるか、それとも理想を求めるか。恋を自由に楽しみたいか、真面目に向き合いたいか。といった誰もが恋愛トークでネタにするような内容を全て押さえているのがポイント。MBTIは得てして「なりたい自分」を想像しながら回答に答えるというバイアスとの戦いですが、恋愛はみなさん割と普段の会話でもトピックがないので、こうした背伸びが無い部分、みんな納得感が高いかもしれないですね。
キャラクター表現もうまく「提唱者」や「巨匠」と言われてもピンとこないところを、ロマンスマジシャンというよりキャラクター来期に寄せていくことによって、より広がりやすさを設計している印象です。
b8ta国内全店閉店:「売らない店」が日本から消える日
ニューリテールの機種としてアメリカよりライセンスを取得し展開していたb8ta(ベータ)が遂に日本でも国内全店から閉店。いわゆる「売らない店」専門としてのお店の難しさが浮き彫りに。
そもそもb8taの価値は主にそこでとれるデータにある。どうしても数店舗しかないb8taでは大規模小売などに比べ、純粋に売る絶対量は大きくはならない。その中で企業がb8taに出店する理由は他では得難いデータが定性/定量の両面で存在するから。しかし、企業での活用力には大きく差があったということで、データが集まってもso whatになってしまう事例が多くあったのかなあと感じます。データをうまく活用できなければ、不動産コストが高めのショールーム出店ということに。
近年新興ブランドのフラッグシップストアが体験価値を大きく高めており、EC×店舗のOMO戦略を推し進めると、答えはニューリテールというよりは、ECでの物理的な受け渡しを含む滑らかなUX+店舗ではブランドの世界観を体現できるような体験を提供するように二極化しています。
ルックリンで話題になったニューリテール「SHOWFIELDS」もコロナを経て規模を縮小し、いまは小さな店舗だけに。同様の問題に直面しているようです。以前ご紹介した上海のルイヴィトンの店舗のように、売ることを前面に押し出さずブランドの体験を強化した“聖地”は増えています。あくまでお店としては客が何度も運びたくなる店ならではの体験を提供できるかが非常に重要ということ。
ブラックサンダー「断面モンスター」:既存の商品価値からヘルシーに持続的なキャンペーンを生み出す仕組み

次々と面白いプロモーションを提供してくれるブラックサンダーの新たな訴求軸はなんと「断面」。ブラックサンダーの断面を見ると、よくみると目と鼻のように見えてきて…人の顔のように見えるんですよね。という「もともと商品が持っている資産」を活用しているのがこのキャンペーンの一番面白いところだと思っています。このキャンペーンのために、作っているのは告知サイトやニュースリリースだけなんですよね。もちろんコストも最小限で抑えられていると思われます。
しかもこの顔に見えるかどうか、考えようによっては品質の「ムラ」とも言えなくもないこの内容を「発見する楽しみ」に変えてしまうという面白さ。しかもこの試み自体は普遍性があるので、このキャンペーンが終わったとしても文化として「断面を確認する」ことが残る可能性もある。製品の喫食体験そのものを深化させるような設計はとてもうまいと思っています。活用されているのはシミュラクラ現象ってやつですね。点や線が人の顔のように見えてしまう心理現象のこと。
改めてこのキャンペーンの面白いところは、生産プロセスを一切傷めないでコンテンツとして価値化をしていること、そしてブラックサンダーのブランドパーソナリティをうまく拡大できていること。もともとブラックサンダー自体はバレンタインの義理チョコキャンペーンなどのように様々なチャレンジをしているユーモラスなイメージ。そこでこのキャンペーンは「断面モンスター」というどこかゆるくてかわいらしい概念を持ち込むことで、ブランドに人格を付与しているのも面白い点です。
「製品のコンテンツ化」という上手いアクション。
源泉かけ流し!今週のマーケティング関連トピックス(今週は18個ご紹介!)
すごい団地!「保育園、ドッグラン、畑を完備」「子育て中に"ご近所さん"を頼れる」 満室が続く《ハラッパ団地・草加》が、令和に人気を呼ぶワケ
空室が出ればすぐに埋まる越谷の団地人気の秘密。
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地域のイベントが月1で開かれる
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畑をみんなで耕す
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ドッグランも併設
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企業主導の保育所も併設
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なんとピザ窯も
この時代にコミュニティ特化型で地域としての力を強めることで人気に。
「場所の力」を高めるチャレンジです。
mento、部下向けAIコーチング機能 管理職のチーム運営支援
mentoがマネジメント層のチーム運営を支援するサービスを開始。
AIコーチが部下の状況把握や目標管理を行う仕組み。
マネジメント層の疲弊や1on1がかえって部下、上司両面の負担になっている中で、AIコーチがそれに代わってチーム運営を支援。
AIを挟むことによって人間の疲弊を軽減する使い方。
タイミーとispace─スポットワークと宇宙開発、遠すぎる2社が同じ言葉で株主と対話するわけ
投資家とのコミュニケーション改革を積極的に行っているタイミーとispace。
ispaceは宇宙開発を行っているスタートアップだが、この難しいカテゴリの伝達をIR部門が取り組んでおり、単なる資料作りや投資家に財務数値を説明するだけでない取り組みを行っている。
先進企業だからこそ、対話が重要。
西武プリンス、「エースホテル」運営の米AGIを買収 最大130億円
国内外8か所にあるエースホテルを西武プリンスグループが買収。
近年は大手ホテルチェーンにおける中堅ホテルの囲い込みが相次いでおり、西武はファミリー中心のプリンスホテルから顧客層をグローバルに拡大していきたい見込みのよう。
強固なブランドと体験を持つエースは変わっていくのかな。
周回遅れのMUFG、「金利ある世界」に攻勢 20年ぶり新店舗でリテール強化
銀行のリアル店舗は激減しているが、その中でMUFGが「エムットスクエア高輪」という次世代店舗をオープン。
なんと20年ぶりの新店舗
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営業時間は平日11-20、土日祝も営業
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法人を扱わず個人を専門
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統合的にMUFGグループの商品を売る(ウェルスナビなども)
金融のコミュニティハブになれるか。
「DeepSeek推薦」を売り文句にするラーメン屋。ネットマーケティングはSEOからGEOへ
中国、上海のとあるラーメン屋において「Deepseekが推薦している」事実と実際の回答を売り物にしている看板が。
ネット検索におけるAIの存在感が増し、GoogleもAIモードをリリースしているが「AI推薦」が強い価値として受け取られるようになっているということか。
スケッチャーズの「手を使わずに履ける」靴が足数10倍 異例の広告戦略
スケッチャーズの顧客満足度が4年程度で1.5倍になっているらしい。
牽引しているのは「ハンズフリー」のスニーカー。
手を使わず履けるのが特徴。
一般的にはスニーカーはデザイン×ブランド×機能性の三位一体で訴求するが、このブランドは純粋な機能性の強さで勝ち抜いている。
独自性の強み。
仕入れ部署なし、数値目標なし…鹿児島発スーパー「A-Z」の超非常識運営
醤油が260種類、車は1店舗で月70台も売り、プラモデルももちろん生鮮もある鹿児島の24時間営業のスーパー「A-Z」がスゴい。
ガソリンスタンドやコンビニ、メガネ店も併設運営する地域の駆け込み寺として圧倒的な存在感。
非効率を極めた全部盛り×地域密着が圧倒的なロイヤリティを形成してますね。
セールの魅力はまだある? 「春が飛んだ、秋も飛んだ」アパレル事情
アパレルの現場では「春が飛んだ」「秋が飛んだ」という言葉が使われるらしい。
猛暑が長くなり、夏の長期化、四季の消失により、従来のアパレルによるSS(春夏)、AW(秋冬)の概念が崩壊。
従来の「シーズンというトレンド形成」が難しくなる中で、別の切り口での訴求が求められるように。
アサヒビールが「夜専用炭酸水」発売、大人向け味わいの強炭酸…酒飲まない層の需要掘り起こしへ
アサヒビールが「夜専用炭酸水」を発売。
こうした「時間で切る」戦略は朝系が多い印象ですが、夜にもお酒の代替やお酒と掛け合わせる需要のある炭酸水は夜切り口なんですね。
基本的にお酒代替としての積極的な選択としての訴求のようです。なので名前も「ライチトニック」とカクテル感。
アウディF1がアディダスと契約。公式アパレルパートナーに迎え、チームウエアを共同開発、独占コレクションも発表へ
人気が加速しているF1。
F1チームのアウディはアディダスと組んで公式アパレルパートナーに。
同じくメルセデスともパートナー契約を結んでおり、F1がスポーツ/ファッションの文脈で価値が高いことを証明していそうですね。
Onが東京で大暴れ。銀座に旗艦店、原宿には研究所
スポーツブランドOnが日本で「大暴れ」
原宿には世界陸上に合わせて期間限定店舗。
銀座には世界2番目の規模の旗艦店が登場。
特に日本ではアジア圏に向けての発信地としての役割が課されることも多い。銀座の店舗では地下にはコミュニティスペースがあるなど、拠点としての強さも。
「過酷なアニメ制作現場を救え」 キリン推し活サービスに若者注目
キリンが運営するファンがアニメ制作会社の健康面を「有料」でサポートできるサービス。
アニメ制作現場の苦境はアニメファンなら知るところ。
サポート希望者は月2,200円を払い、そこからキリンやパートナーの商品がクリエイターに送られる純粋な応援サービスなんですね。
「インバウン丼」食べない人にも批判された深い訳
テーマパークの「課金パス」が当たり前に。
富士急ハイランドでは5万円はらえばアトラクション12種が待ち時間なしに。
確かに休日でも数時間待ちに待ち時間無しというのはスゴい。
そして1日10枚限定。高額だが、圧倒的な効率と時間を買えると考えれば全然アリでは…!?
学生マンションが「ホテル化」 シアタールームにプールまで、令和の一人暮らし事情
学生向けのマンションがホテルのようになっているとのこと。
デザイン性の高い内装や、シアタールーム、屋外プールまで。さらに食事や家事付き。
めちゃくちゃ手厚いサポートですね。
少子化が進んでも大学進学率は上昇中。
就職までのモラトリアム期間の安心な選択としての高機能マンション。
10月にポイント廃止のふるさと納税、1兆円市場の争奪戦 楽天は総務省提訴
寄付総額は1兆円超えのふるさと納税。
政府が制度見直しを行い、10月から仲介サイトでのポイント還元は廃止。
ふるさと納税サイトは限定の特典などを作りにくいので、サイト間の差別性を作るのは難しく、強い獲得エンジンになっていたのはポイント獲得の訴求。
ポイントがない世界はどうなる?
爆笑間違いなし? 「漫才カラオケ」、名古屋大が開発 プロのネタなどを追体験できるシステム
名古屋大学が、カラオケのように漫才を再現するシステムを開発しました。面白いですね~。ただ言葉を並べるだけでなく、どんな感情を伝え、どんな動作をすればいいのかまで指示してくれるんです。優れた漫才の台本は、素人でも面白くできるのでしょうか?漫才をコンテンツ化する試みとして、興味深いですね。
「流れてくる猫」を笑わせろ くら寿司、マンネリ化脱却図る
回転寿司のくら寿司、独自の回転レーン活用。
泣き顔の猫が映るモニターに利用者が笑顔を見せると特典が獲得できる「スマイルチャレンジ」がスタート。
くら寿司の体験価値を高めるために、エモーショナルな刺激である笑顔を媒介に。
泣き顔は割とネガイメージだが、ポジティブな印象になるのかな?
海外現地調査レポート:セレブに愛される「機能性」第三極スニーカー APL(Athletic Propulsion Labs)
NIKEやAdidasを第一、OnやHOKAが次来る系の第二とした時に、第三極のスニーカーブランドが存在していることをご存じでしょうか。そんなアメリカ生まれのプレミアム機能性スニーカーブランド、APLのニューヨークSOHOの店舗に行き実際に買ってみたので解説&レポートします。
APLは2009年生まれ、LAで創業したブランドです。面白いのは創業当初からスポーツの機能性と高級感の融合を掲げていること。APLが一躍有名になったのはバスケシューズから。創業1年後に生まれたモデルがジャンプ力を高める画期的システムを持っており、NBAから公式に禁止された経緯があります。この事件が結果的にNBAに禁じられるほどの画期的機能性を持つシューズ、としてブランドのナラティブを強化することに。2014年にはランニングやトレーニング市場にも参入し、今に至ります。基本的には高級デパート(ニーマン・マーカスやセルフリッジ)に置かれていて、リアル店舗はLAやN.Yに少しだけあるような流通網となっています。
APLは優れた技術的機能性とそれに伴うデザイン性、アスレジャーブームとの親和性、スニーカーのラグジュアリー化、アメリカセレブの着用によるマーケティング、という現代のアパレルブランドに求められる要素を一通りそろえていることが特徴です。

一目見れば分かるこのデザインは特に強力なブランドを形成しており、アッパーに継ぎ目がない一体型の編み込みニットは見たら一発で分かる美しいデザインで非常に素晴らしいですよね。デザインだけでなく、いわゆる「スニックス」(スニーカー×ソックス)と呼ばれるような、まるで靴下のようにやわらかくフィットする足なじみの良さです。ブランドロゴも実にシンプルで、ミニマルなデザインなのが特徴です。
機能性も良くできていて、元アスリートが設計に関わっていることもあり、長時間の着用でも疲れにくい設計になっています。僕は街履きをしていることが多いのですがOnやHOKAなどの快適性の高いスニーカーとなんら遜色もないレベル。一般的なスニーカーブランドは、ガチのランナー向けと街履きライフスタイル商品は分けていることが多いですが、APLはどのモデルもトレーニングから普段使いまでいつでも使えることをウリにしてます。
N.Yのストアはこの曲線が印象的でミニマルなデザインのAPLらしく美術館のような現実感のない空間設計なのが特徴。そこになんの説明もなくスニーカーが並べられています。コンセプトがLuxury Meets Performance(高級と性能の融合)であることは創業時から変わっていないのでスニーカーは安くて3万円、高くて5万円以上とかなりのプレミアムプライス。LA生まれらしくハリウッドセレブ愛用のストーリーで、カーダシアン一家や(この人たちなんでも広告塔やな、、)有名シェフやモデルなどもお気に入りに挙げていて、典型的なバイラルマーケティングも有効に作用しています。かわりに広告はあんまりやらないパターン。

まとめるとAPLのポジションは、優れた機能性とデザインを持ちながらも、ガチなトレーニングや競技向けというよりは、そのレベルのアクションに対応可能な機能を持ちながら、日常使いでがっつり(しかしめちゃくちゃ快適に)はける、という特殊なポジションをとっているということが実際に店舗に行き、買ってみてわかりました。
僕は5月に買ってきておよそ4カ月ほどちょくちょく使っているんですが、デザインが特殊であるにも関わらずとにかく履き心地が良く、普段使いでは特に不満がでないレベルで快適です。通気性が高いのも良い。そして本当に人とかぶらない。もしアメリカや欧州に行った際は是非高級デパートの靴コーナーで探してみてください!30足以上持っているスニーカーオタク的にはおススメです!

明日から効く!マーケティング/ブランディング関連書籍レビュー
『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』(吉田満梨・中村龍太)

2000年代から提唱されている米国バージニア大学生まれのエフェクチュエーション理論は、経験豊富な起業家の意思決定プロセスから導かれた優れた経営に関する「思考パターン」を理論化したものです。この理論の核心は、明確な目標や綿密な計画に従って成功していくのではなく、常にスタートを「今持っている手段で何ができるか」から出発して試行錯誤を繰り返しながら進んでいくことが現代における成功の秘訣である、ということ。この理論が産業界にもポジティブに受け止められたのは、(一部の)起業家の成功要因が再現性可能な要素に分解できると発見したことなんですよね。
エフェクチュエーションには5つの原則があり、超簡単に説明すると
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手中の鳥(Bird in Hand)の原則→目的でなく常に手元の手段から発想を始める(持っているリソースを洗い出しそれで何ができるかを考える)
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許容可能な損失(Affordable Loss)の原則→利益を期待するのでなく、許容できる損失に着目してリスク判断をする
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「クレイジーキルト(Crazy Quilt)の原則」→あらゆるステークホルダーと関係性を持ち、協力者をつなぎあわせるようにネットワークを活用する
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「レモネード(Lemonade)の原則」→予期せぬ失敗や問題を否定せず、うまく活用する
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「飛行機のパイロット(Pilot-in-the-Plane)の原則」→未来は予測せず、自分でコントロール可能なことに着目する
この考え方を初めて日本人向けに非常に分かりやすく説明しているのが本書です。著者はエフェクチュエーション理論の研究者であり、明確にエキスパートです。そして皆さんにエフェクチュエーションの本をおススメする理由は、この本の役立つ適用範囲が現代においては非常に広いと考えているから。
もちろん、この理論のスタートである起業家に対しても十分に役立つのですが、社内での新規事業創出にも活用できると思いますし、マーケティングの試行錯誤にも使える。なんなら子育てなどにもこのマインドセットは一部利用できると考えています。ある種、現代は個人の能力が拡張しやすくなり、また様々な組織がゆるくなった結果自由に動きやすかったり、インターネットなどを活用して様々な活動を広げやすい時代になっています。こんなタイミングにおいて、縦横無尽に活動しながらも、捕らぬ狸の皮算用はせずに、現実的に前に進んでいく、困難を活用しながら打開していく手段とは何なのか、がまさにエフェクチュエーション理論なのです。
不確実性が高い起業や新規事業、あるいは現代の生き方であるからこそ、自分の持つ資産を明確にして、コントロールできることだけに目を向け、他人との関係性から力を借りながら、「未来を下手に予測せず、目の前のコントロール可能なことを積み上げる」という思考スタイルが結果を出しやすいのでは?と私は考えています。
1年後に効くかも?あなたにおススメなインプット

一言で言えばこの本は怪作である。なにせこの本はビジネス書、仕事術のテイを装いながら、実際はある種のメタフィクションとして痛烈に人間の本質を問うような、まさに上出氏の企画番組とオーバーラップするような内容になっているのだから、完全ではないが若干のネタバレ的なものを挟むので、絶対にネタバレせずに読みたい人はここまでで飛ばしてほしい。ただ僕個人としてはこの本は「メタフィクションとして」間違いなく優れた作品である。ミステリー好きにもおススメできるかもしれない。
この本は2部構成になっており、1部は分かりやすい仕事術が語られる。そこで語られるのはうそをつかない、ズルをしない、睡眠を大切にしろ、など、上出氏の作風を知っていれば少し肩透かしを食うような実に真っ当な言葉が並ぶ。なんだ、タイトルは「あり得ない仕事術」なのに、タイトル詐欺か、なんて読んでいる間は感じるような読み口である。とはいえあまりにも真っ当な正論なので、なんとなく読んでしまう。
本書の様子がおかしくなるのは第二部からだ。第二部から本書は明確にメタフィクションに切り替わる。表現としてはとある番組の製作を行いながら“上出氏”が深みにはまっていく様をリアルに描いている。面白いのは、真っ当で詰まらないようにすら感じる第一部と異なり、第二部の番組を撮るために行動がエスカレートする上出氏の姿は、むしろハイパーハードボイルドグルメリポートのディレクターとして頷けるような内容になっている。つまり、第一部はビジネス書“風”としては違和感ないのだが上出氏の姿としては違和感がある、第二部はビジネス書としてはおかしいフィクションになっているが上出氏のイメージとしてはあり得そうに感じてしまう。このずらし方が読者をゆさぶる混乱によって、最終的な結末から本書の副題通りの「正義の使い方」とは何なのか、を読者に問うという一級品の出来栄えとなっている。もちろん既存の金太郎飴のようなビジネス書(仕事術本たち)に対するアンチテーゼにもなっている。
記憶を消してもう一度読みたい。実に不穏で性格が悪く、しかしある意味真摯にえぐってくる仕事術風メタフィクション。ぜひ読んでみてください。
今週の1曲
https://www.youtube.com/watch?v=7_UnV1U4uQc
ギャングスタ的な世界観から、偶像でなく等身大の表現で勝負するようになった千葉雄喜。その千葉雄喜が結成したブルースとの異色コラボユニットがニジーズ。なんとヒップホップアーティストであるにも関わらず、BLUE NOTEで初ライブをするという実に自由な立ち回り。もう誰も千葉さんの次の一手を予測できる人はいないでしょう(おかき作ってたし…)
そんなニジーズのファーストアルバムに入ってるのがこの曲『ビザの申請』。mamushiのビルボード入りを引っ提げて、拠点をLAに移す千葉雄喜の超等身大の叫びがそのまま曲になっていてなんとも感慨深いし、今の千葉雄喜らしいなと思う曲でもある。ある種の偶像としてのKOHHでなく、千葉雄喜としてビザに面倒がったり戸惑ったりOKが出て安堵したり。まあ本当にそれだけのブルース×ヒップホップなんだけど、その力の抜け具合のままアメリカにいく、という「ローカルだけどグローバル」というのが今の千葉雄喜の面白さなんだろうなあと思い、今週のご紹介でした。
最後までお読みいただきありがとうございます。もし内容が良ければ登録ボタンより、次回のニュースレター配信をお待ちください。
最後に!
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