ブランドロゴを1年で変える意味&日本で「缶の水」はマーケティングできる? 25年9月第2号

今週は26個のニュース、書籍2本、香港の「循環型カクテルバー」をご紹介。今週は10,707字でお届け。
南坊泰司 2025.09.09
誰でも

忙しいあなたのためのマーケティング情報サプリメント。週に一度、厳選されたトレンドと洞察をまとめていきます。これを読めば「主要なトレンドをキャッチできる」、そういった想いで届けてまいります。まずはご登録をお願いいたします。

マーケティングトレンドインプット 今週のクイック解説3選

日本で「水」のブランディングはできるか?気持ちアガル水の挑戦

お菓子メーカーのロッテがウェルネス事業の一環として新しい缶の水ブランド「THE DAY」を9/16に新発売。2商品あり、いわゆるミネラルウォーターと炭酸水の2つ。Podcast奇奇怪怪でも有名なTaitanをクリエーティブディレクターにし、マス向けというよりはトレンドに敏感なカルチャーシーンに当てていくようなイメージ。デザインもかなり日本ぽい雰囲気とはかけ離れているし、エナジードリンクのようなトーン&マナーですよね。

ファッションアイテムとして「缶」は世界的に注目されるアイテム。情緒的な感覚を刺激するモノとして強い。海外では『Liquid Death』が先行する事例。ただの水を、ヘヴィメタルのような過激なデザインのアルミ缶に入れ、「Murder Your Thirst(渇きを殺せ)」というスローガンで販売。カルチャーな若者から大きな支持を受け急成長している(今では味付きウォーターにも拡大)。

そもそもなぜ「水」か?コロナを経て、ソバーキュリアス(健康志向から、アルコールを飲まない、あるいは少量しか飲まない人)の嗜好が増える中でお酒の代替となり、例えばみんなで盛り上がりたい時や、クラブで飲んでもシーンに合う液体が求められており、そこにバシッとハマったから。

まさに「飲むファッションアイテム」という究極の情緒商品。もちろんそれが価値を生むのは、ブランドとして如何にクールであることを保てるか、ということ。時代の空気をTHE DAYは掴めるのか。大いに注目したいです。

たった1年でのロゴの変更。Speedaブランドがなぜ「朝令暮改」したのか?

ユーザーベース社が経済情報プラットフォームであるSpeedaを「経済情報AIエージェント」とカテゴリを変更するとともに、ブランドロゴ・表記の変更も実施したことを発表。ここではサービスとしてのSpeedaではなく、Speedaのブランディングについて深掘りしてみたい。

実はSpeedaのロゴがカタカナになったのはわずか1年前。バラバラになっていたサービス名称を統一し、さらに表記をカタカナ、かつポップな筆致に変更。国内市場を狙い、リテラシーギャップのある企業にも伝わる親しみやすさを作っていくようなイメージ(バクラクのような)。

一方で今回の変更で再び英字に。サービスとして最新技術であるAI領域で戦うという決断、そしてNewspicksと共通する「動物モチーフのロゴ」に変更することによって、Newspicksと兄弟ブランドであることを明確にしていくような変更。さらに「スピーダ 経済情報リサーチ」のような副題もそぎ落として全てSpeedaに。

ユーザベース社の持つアセットの中で最も強いブランドはNewspicks。なのでそこからの支援を受けつつ、さらにAIとしてのプラットフォームであることを分かりやすくするためにサービスを細かく分けるというよりは「Speeda」という1つの中に機能を集約していくようなイメージ。

生成AI時代のビジネス実装はバーティカルな職能ではなく、総合戦になっていくという考え方。更にはAIのDeep reserchとどう戦っていくのか。確かにAI領域で仕掛けるなら、今この瞬間しかない。そのためには1年前に行ったリブランディングも再検討する必要があるという判断。個人的には非常にエキサイティングなアプローチで面白いと思っています。

フィーバーはいつもミーハー層が火付け役になる。WBCのネトフリ独占が起こす「偶然の欠如」

2026年春開催の第6回WBCの日本向け放送権をNetflixが独占し、地上波では放送されなくなることが決定。当然Netflixは圧倒的な金額のFeeを提示しており、経済的に太刀打ちできなかった日本のテレビ局にとっては資本主義の戦いで負けたという話で議論の余地はない。

ただ現象としてこの状況を見ると、日本におけるWBCがどんな存在になるのかは気になる。Netflixの最安月額料金は900円。本当に見たければ1000円弱払えばいい、それはその通りである。しかし、実は「無料サービスと、手続きが必要な有料のサービス」の間には非常に大きな隔たりがあり、それは900円という金額だけではない。そしてこのテレビを付けさえすれば見られる(あるいはTVerなどにアクセスすればとりあえず見られる)ということが、実はIPの拡散には非常に重要なのである。この偶然性を失ったWBCがどれぐらいの盛り上がりを生み出すのか、非常に気になります。

アニメの世界では一時期特定の動画見放題サービス独占コンテンツが非常に多かった時代がありました。ただ、今となってはその数はかなり少なくなっています。アニメのように一定の同時性が盛り上がりに直結する作品は独占で見る人が限られてしまうと盛り上がらない=コンテンツがそこで終わってしまう。ドラマなどとは視聴習慣が違うわけです。スポーツもそれに近い。

もちろん、地上波で放送して稼げる金額はたかが知れている。これが日本のテレビ局の広告収入モデルがグローバルプラットフォームには通用しにくい理由。海外でも多くのスポーツコンテンツはCS放送です。ただ例えばアメリカの国民的なイベント、スーパーボウルはいずれかの全国ネットワークが交代で放映していて誰でも見られる。スポーツバーなどでも流れている。果たして偶然性を失ったWBCはどのような盛り上がりを創り出すのか。

個人的にはNetflixが生放送をどのようにデザインするのか、めちゃくちゃ気になってます。

***

源泉かけ流し!今週のマーケティング関連トピックス(今週は26個ご紹介!)

ほぼ増員ゼロで売上7倍──海外eSIMスタートアップのトリファに学ぶ

急成長するeSIMスタートアップ、トリファ。

マーケティング支援を包括的に行っていたのは独立系VC グローバルブレインのハンズオン支援チームだったとは…面白いです。

KPIを明確に策定しつつ、少人数組織の数を増やすことなく、マーケティングチャネルも多様化。TVCM戦略まで並走したとのこと。

UCC「食べるコーヒー」即日完売 「余韻」新価値に市場開拓 

UCC上島珈琲の「YOINED」という食べるコーヒー。

6枚入り2,700円というなかなかの値段ながら売上好調。

これ、私も食べたんですが、かなり美味しいし、いいコンセプトで素敵です。

味的にはチョコっぽい感じなのですがカカオ豆0%。凍結粉砕したコーヒー豆でこんな味ができるのは素敵~

サイコーに分かりやすく愛着もあった社名が、成長の足かせになった話 

シリョサク→うねり株式会社のリブランディングを弊社で支援しました!

  • シリョサクというわかりやすい社名からあえて「うねり」へ

  • 注力する思想「わかおも」の明確化

  • 哲学を体現するロゴとデザインシステム

このハードな決断をやりきった豊間根さんを尊敬します。

ハーゲンダッツ「ザ・ミルク」好調 「バニラと同じ」払しょくのマーケ策

ハーゲンダッツの新商品「ザ・ミルク」が売上好調。

ハーゲンダッツと言えば、のバニラ味と何が違うの?と思われやすいところから、あえて王道のミルクの素材自体の訴求に振り切って展開。

結果、本格感がしっかり伝わって好調に。

ハーゲンダッツの持つブランドアセットをうまく活用できてる。

Z世代のSNS利用最新動向2025 

最近の若年層のSNS写真動向。

顔やスタイルを直接的に「盛る」ことに抵抗が出てきた若年層は構図にこだわるように。

鏡越しで撮って顔を隠したり、

上側から広角で撮ったり、

後ろ姿を撮ったり、

横顔にしたり…

自分というより、構図とコーデで勝負。

暑すぎて「北向き住宅」の人気上昇 日当たり良すぎ「南向き」敬遠 家賃も安くてお得

昔は敬遠されていた北向きの住宅が、この連日の猛暑で人気上昇中。

日当たりが良すぎると敬遠される時代に!

現状だとまだ市場価格に反映されていないので割安感もあり。わざわざ引っ越す人も出てきているらしい。

猛暑で変わる常識は色々ありそうだ。

オゼンピックが食欲を減退させる中、一部のレストランではミニチュアサイズの食事を提供している - ニューヨーク・タイムズ

ネタ本文:世界で大ヒットしているGLP-1製剤のマンジャロやオゼンピック。

これらを服用すると食欲が大きく減退するので「普通の量」は食べられなくなったり、酒が飲めなくなったり。

なのでアメリカではGLP-1利用者向けメニューが登場しているとのこと。

直近1年でPV300%急成長。“読者目線”のコンテンツ設計で数字を伸ばす、ZOZO NEXTのオウンドメディア運用術

この1年でPVが300%成長中のZOZOのオウンドメディア。

ファッションアイテムの先端技術やブランドの歴史、ファッションがカルチャーに及ぼした影響などを深堀りするなどかなり骨太な内容。

開催したイベントには600人の参加者が来たらしい。メディアのイベントでスゴい

「モンチッチ」ブーム再来、SNSで世界規模に拡大-バッグの飾りに 

ラブブ的なバッグチャームとして、70年代に流行したキャラクター、モンチッチがブームに。

火付け役が日本でなく海外。タイや韓国からの人気で、ラブブの火付け役でもあるブルピンのLISAがモンチッチを買う姿でも人気に。

「日本版ラブブ」としてどこまで盛り上がる?

進化する広告テック、スポーツが主戦場 博報堂は心拍数で感情分析

進化するスポーツ放映中の広告。

試合データと観客の生体情報やスタジアムの感性などを分析し、試合展開に応じた好感度が高まるタイミングで広告を出す仕組みを開発しているとのこと。

確かに野球場では展開が盛り上がればビールは売れる。

同じように感情の動きに連動できれば広告効果も高まる!

チャンネル登録者35万人→合計300万人 『コロコロコミック』が小学生男子相手に“本気”でやったこと

コロコロコミックが運営するYoutubeチャンネルの合計登録者数はなんと300万人。

マルチチャンネル化に早くから取り組んだことが成功の秘訣。

  • ベイブレード専門

  • コロコロ独自のアニメYouTuber「ブラック」

  • 公式チャンネル

  • デュエルマスターズ専門

小学生男子も興味が多様化することに対応。

SHE、日本スタートアップ大賞受賞!CEO就任のカオスを経て、社会を変えるために挑み続けた5年間 

SHEが日本スタートアップ大賞の特別賞を受賞。

成長スタートアップが臨む「踊り場」を超えて事業と組織の転換点をどう乗り越えていくかの生々しいnoteとなっています。

普通に読んでたら資金調達時の私のXでのコメントも拾っていただいていて驚き。

大手QBの半額以下、激安理美容室に「美意識が高い」若者が通う理由

理美容室のHair Salon IWASAKI、店舗数は1,200を超えて成長中。

QBハウスを超える690円カットで人気がある。

面白いのは「安いから髪型にこだわりない人が訪れる」のではなく、安いから髪型にこだわる人が「セカンド美容室」として使っているということ。

結果的に若年層の利用者も多いらしい。

イケア、 多様化するニーズへの対応と、より持続可能な成長を目指し、 首都圏でのビジネスの最適化を推進

IKEAが都市型店舗であるIKEA原宿およびIKEA新宿の閉店を決定。

オープンから約5年で見直しをし、従来の郊外の大型店舗に力を入れていく方針。

IKEAの都市型店舗は顧客との身近な接点創出のアンテナショップとしての役割を期待されていたと思いますが、IKEA本来の価値は伝わりにくかったか。

なぜ人気?「マーラータン」ブームが加速中、毎月開業・異例ヒット続々で大手も熱視線

マーラータンブームが底堅いレベルになり、新店舗がどんどんできている。

本家中国のチェーン楊国福も進出し、日本独自の店舗も多様化。マーラータン自体は中国の食品だが、トレンド的には韓国での人気も後押し。

実は火付け役の七宝麻辣湯ってラーメン評論家の石神さんの店なんですよね。スゴイ。

「母乳味アイスクリーム」が米国全域で話題を集めている。ベビー用品会社フリーダ(Frida)とオードペロスアイスクリームカンパニーが協力して母乳の味からインスピレーションを受けたアイスクリーム

「母乳味のアイスクリーム」

というセンセーショナルな商品が発売され全米で話題に。

発売したのはベビー用品会社のFridaで新商品の宣伝として。

同社の調査では70%の女性が「自身の母乳を味見したことがある」と答えたらしい。

賛否はあれどある種の共通話題で話題になるのも頷ける。

バッグチャームのブーム復活、高級ブランドで1,000ドルも-業界は期待

バッグにつけるバッグチャームのブームが到来中。

女性がバッグにぬいぐるみ、ラブブやモンチッチを付けてるのを見る機会も増えたよね。

ハイブランドもこうした動きに目を付けている。

自分なりのカスタマイズ文化、もちろん高級なバッグよりも安い商品でアピール可能。

色んな商品が出そう。

音楽と会話を同時に、オープンイヤー型イヤホン ただいま勢力拡大中

オープンイヤー型のイヤホンの人気が加速中。

たった数年で10倍程度になってるらしい。

イヤホンの仕様が長時間化すると、音質は良い密閉型を付け続けると疲れてくるんですよね。付け続けて辛くない商品が人気になるのは納得。

僕はshokzを使ってますがかなりおススメです。

えっ、入会金1万1,000円? 「成城石井メンバーシップ」会員の8割が満足する理由

成城石井の有料会員プログラムはなんと入会金1.1万円するが、満足度が高いらしい。

  • 高級海苔やウィスキーなど希少品販売

  • 常に3%割引

  • オリジナル商品

  • 会員限定イベント

などなど都内6店舗で実施中。

成城石井には強い品揃えもあるし設計次第ではどんどん広がりそう

あすけん×映画『8番出口』コラボ開始 8,888歩チャレンジ

あすけんと8番出口のコラボキャンペーン。

確かにダイエットは出口の見えない戦いではある…

最近のあすけんが面白いのは「あすけんの女」としてミーム化しつつあるこのキャラクターをうまく時流に載せているということ。

このキャンペーン画像のなんとも言えない表情も笑えます。

アメックスが“量から質へ”大転換 最上位空港ラウンジ、その全貌

近年クレカブランド各社はサービスの再編を実施中。

アメックスは羽田に最上級のセンチュリオン・ラウンジをオープン。

実際にそこで調理した食事があったり、ライブキッチンも。

ステータスカードが多くなったことでラウンジは常に混雑。ハイステータスカードの価値を高める狙い。

アジアを席巻、BLが世界を繋ぐ?

ボーイズラブコンテンツが世界的な潮流に。

おっさんずラブなどでマスに広がる一方、タイBLが人気に。日本のファンアートなども多いので日本初のカルチャーとしてアジアに広がり独自進化。

日本は漫画が真ん中にあるが、海外では主に小説が起爆剤らしい。

ファミリーマート、初のアパレル小型店 9月に都内開店

ファミマが遂にアパレルの専門店をオープン。

150品、ファミマの衣料品ブランド「コンビニエンスウェア」のほぼ全商品を取り扱い。

まさにファミマアパレルの聖地という扱いに。

衣料品が好調なのは誰もが知る通りだが、専用衣料品店にしたら売れ行きはどうなるのか。気になります。

西武ライオンズは推せる選手の宝庫!「圧倒的至近距離」こそ最強のエンタメになる

西武ライオンズの好評な広告のキーとなっているのは「圧倒的至近距離」というワード。

西武のホーム球場ベルーナドームは選手としての距離がかなり近いことを活かしている。

このワードなら選手押しの人も、試合押しの人にもハマるよね。

スタバ“新しいスタイルのカフェベーカリー”が新宿に誕生! イタリアのクロワッサンなど提供

「新業態のスタバ」が新宿に登場。

スターバックス リザーブ カフェのコンセプトは日常の少し上質な大人のご褒美。

クロワッサンが主力商品のベーカリーカフェとのこと。

「スタバの食べもの」はやや評価が良くない印象もあるので、イメージ変えられるか。

ヘルシンキの「かもめ食堂」が閉店へ フィンランドブームの象徴的存在

ヘルシンキのかもめ食堂が閉店しちゃうらしい。

同名映画のロケ地として日本人的には観光地的存在。

懐かしい〜8年前に聖地巡礼したなぁ。おつかれさまでした。19年続いたとのこと。

***

海外現地調査レポート:香港のバー「Penicillin」 世界でも珍しい「循環型カクテルバー」

香港で行ったバー、Penicillin(ペニシリン)が非常に面白いコンセプトだったのでご紹介します。店名はまさに抗生物質のペニシリンの名前にちなんでいて、店内は白いタイル、壁には瓶が並び、まるで化学実験室のようなデザイン。研究所感があります。ここ、アジアのベストバー50 2024では24位になるなど、世界的にも評価されているバーなんです。(ちなみに香港にはアジアベストバー50のうち、9店舗もあるアジア最高のバーエリアでもあります)

このバー、コンセプトはサステナビリティ特化型。ゼロウェイスト、発酵、など現代のサステナビリティアプローチを全部盛りにしたようなバーです。基本的に地元産の素材やアップサイクルした材料を積極的に活用することで、「その日の営業終了時に廃棄物がほとんど出ないバー」を目指しています。

さらに素材は可能な限り香港で調達することでカクテル提供時には「これらのカクテルのはCO2は一切使われていないんだよ(=輸送距離を最小化してエネルギー消費を極限に減らしている)」という説明もありました。

通常は捨てるリンゴの搾りかすやパイナップルの皮、余ったパンやチーズなどを発酵・蒸留しており、たとえば通常は廃棄する残りパンを再発酵・蒸留して作った「ブレッドウォッカ」や、フルーツの皮などを活用したリキュールなどほとんどが自家製で作られている味。シグネチャーカクテルであるOne Penicillin, One Treeは植林支援のカクテルで、売上の一部がボルネオの熱帯雨林に木を植える基金に寄付される仕組み。全ての活動がサステナブルにつながっていく強固な体験とコンセプトを持っています。そう説明されると別に美味しくないんか…?と思いますがそんなことはない。普通にカクテルとしても、味のミックスが仕上がっていて、ホスピタリティも上々。哲学が隅々まで行き届いていながらも、店としてちゃんと良い体験になっているのがポイント。

ちなみにこうしたサステナブルなコンセプトの店は経営的に厳しい場合も多いのですが、ここはもともとアジアベストレストラン1位を取ったバーのスタッフが立ち上げている「経営二週目」のバーで経営モデルも工夫されています。実は近くに姉妹店Dead &が存在し、こちらは気取らないバーとして営業されていて高回転型の人気店。ここで大量仕入れした食材を共有したり、Dead&側で余ったコースターや紙コップをペニシリン側では再生紙にしていたり、うまくハイコンセプトと気兼ねないバーを両輪で回すことでうまく経営されているとのこと。さらにペニシリンでは様々な廃棄食材を発酵などで活用し手を掛け、そして卓越した技術でカクテルに仕上げることで、食材自体の原価率は低くしているとのこと。

レストラン業界でもハイクラスレストランの持続性が話題になる中で、強いコンセプトとビジネスを両立する優れたお店として、いろんな意味で勉強になる店でした。良い時間になると混んでくるので、予約するか、それとも開店と同時に飛び込むのがおすすめです。

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明日から効く!マーケティング/ブランディング関連書籍レビュー

スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険 谷川嘉浩

常時接続のスマホ時代において失われつつある1人の時間の価値を見直し、情報の氾濫する現代をどのように生きるべきかを様々な哲学者の思考を元に問いかける内容。哲学書だけでなく、文学や映画、アニメなど多彩な引用を交えてこの時代に生きる我々に「届く言葉」で作っている非常にあたたかく、丁寧な哲学書でぜひおすすめしたい作品です。

わたしたちが無為に見てしまうSNSへの逃避を快楽的なダルさと表現したり、忙しく生きる人々をハイテンションと多忙で退屈を忘れようとする社会と喝破するなど、今私たちが悩んでいるあれこれをうまく言語化しています。著者の谷川さんは1990年生まれの30代。まさに現代に生きる人間ど真ん中であり、本人もスマホを手放せないと話すまさに「当事者」です。この本はマーケティングやブランディングに携わる人としての現代を生きる人々のインサイトを深掘りするためにも使えますし、あるいは私たち自身がどう生きるか?という問いに対しても役立つ、非常に幅広く自分の肥やしになる本なんです。

常時誰かとつながっていないと不安になる人々。それを「承認欲求」と表現することは簡単ですが、我々の抱える問題はもっと根深い。常にマルチタスクを求められる常時接続デバイス、そしてアテンションエコノミーで過激なものが流れるアルゴリズム。そこに対して「デジタルデトックスせよ」と言うのは簡単ですが、そんなことなかなかできない。自分だけの内面的な物語を、自分が主人公の物語として人と比べずに生きるための、孤立、孤独、寂しさ。これらの感情と向き合うことによって、常に移り変わる自分と対話する筋肉を鍛えるということも教えてくれるんです。

***

1年後に効くかも?あなたにおススメなインプット

香港映画を救った超大ヒット作品『トワイライトウォリアーズ』と香港映画界が取り戻した活気

2024年、香港で公開され、香港映画史上歴代No.1ヒットになった超話題作、トワイライトウォリアーズ。この映画、大好きな僕としては香港行で絶対に聖地巡礼したい!ということで、香港は九龍城塞公園で行われている映画セット再現エリアに訪れてきました。敷地は小さいのですが、この映画で印象的だったエリアの多くが再現されていてしかも触れてしまうぐらいの距離感。そしてなんとこれが無料で見られてしまう。香港映画界にとって、この映画がいかに重要なのか、ということが分かる力の入れようでした。ちなみにこの展示は香港の映画発展基金の資金援助を受けて実現されているらしく、しかも3年間の長期開催が決定しているとのこと。

そもそも香港映画は一時期の超人気作品を乱発していたころから比べると勢いを大きく失っていた状態。さらに香港の政治は激動していて、どんどん中国化し、古き良き香港が失われている実態があります。この映画の舞台である九龍城は英国も中国も管轄できなかった治外法権エリア。もちろん当時の香港人からすればカオスが横行する難しい場所であったものの、今の香港人から見ればある種の自由の象徴、自治的なコミュニティとしてノスタルジーのターゲットとなる場所なのです。そうした九龍城の良さを、古い香港人だけでなく、若い世代の香港人にもノスタルジーの刺激と共に熱狂的に受け入れられた。まさに久しぶりの香港らしい象徴であり、ニュースとして、あらゆる人々に受け入れられていたってことなんでしょう。この映画が非常にシンプルなアクション映画で、難しい政治のことを考えずに楽しめることもポイントなのかもしれないですね。

実際、香港に居ると、この映画で最も格好良いキャラクターでもあるロンギュンフォンを演じたルイス・クーがありとあらゆる商品の広告タレントとして使われていました。街の道路に突き出した看板がどんどん撤去されてしまうなど、いわゆるみんながあこがれた香港が失われ、更に中国化していき、近くの深圳の発展に押されている香港ですが、新しい香港の精神とノスタルジーを合わせた象徴として、この映画がど真ん中にあるということが香港に実際行くとよくわかりました。ちなみにこの映画、音楽もアクション監督も日本人なんです。日本人にとっても非常に重要な作品ですし、本当に面白いのでおススメ。来年以降、三部作の残り2つが放映されるとのことでめちゃくちゃ楽しみですね~!!

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今週の1曲

DJ TATSUKI - Invisible Lights feat. Kvi Baba & ZORN
https://www.youtube.com/watch?v=PLAlIqzEGJk

Kvi Babaの武道館に寄せて好きな一曲をご紹介。この曲を出したときのKvi Babaは20歳なので衝撃過ぎるわけですが、夜の都市っぽさがあるInvisibleな光たちっていうモチーフが凄くよくて、曲の切なさ、メロディアスな感じも含めてすごくZORNといい化学反応が生まれてますよね~まだまだ駆け出しの時の青さもあって非常にイイ。

実はタイや台湾でもめちゃくちゃ聞かれている曲らしく、日本だけじゃなくアジアに刺さってるのがすごい。やっぱり日本のHipHopでは枯れ感のある曲調がダントツで好きな南坊でした。

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