なぜAI企業がブランドキャンペーンをするのか?&イマーシブエンタメの草分け「スリープノーモア」解説 25年10月第1号
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マーケティングトレンドインプット 今週のクイック解説3選
ビール会社がアパレルで稼ぐ理由。オリオンビールのIP活用の副次的効果
先月上場した沖縄の「ソウル」ビール、オリオンビール。自社ロゴを活用した自社IP事業が急成長していて、グッズの販売金額は2年で3倍、30億円に到達。これだけで相当な事業規模に。もともと沖縄観光のお土産としてオリオンロゴのグッズは色々あったが、オリオンビールはメーカーの提案を待つだけの受け身の姿勢から、IP活用のグッズ専門チームを立ち上げ、提携企業を積極的に開拓し、クオリティもしっかり管理する体制に変更し、大きく売り上げを伸ばした。(模倣品も多かったので、非公式に対する対応も強化)
Googleで検索すると実に多くのパターンが生まれているわけでなく、センスが良いものも多い。ちいかわとのコラボTシャツもあり。サジェストで「オリオンビール Tシャツ かわいい」と出てくるのがスゴい!
ビール事業とどんなシナジーがあるのか?ということだが、オリオンは最早ビールブランドではなく、ライフスタイルブランドになっているということなのだろう。お酒を飲むというだけでなく、沖縄旅行を体験するために必須の存在になっている。もちろん喜んでTシャツなどアパレルグッズを買い、身に着けたら、オリオンがある店に行ったら思わずオリオンを頼むのは間違いない。さらにオリオンを来て歩く人々は街の広告塔になる。もちろん家に帰って着たりしていれば、それぞれの住んでいる地域でもオリオンを飲みたくなる。
「沖縄の象徴」としてのブランドへの進化に、コントロールされたIP戦略が強力に作用しているということ。
シャウエッセンの「夜味」 時間をずらすマーケティングアプローチの効果とは?
発売40周年のロングセラー「シャウエッセン」が、期間限定商品の「夜味」を発売し、初月目標の3倍のヒットを記録。シャウエッセンは限定品も出しているが、従来は「チェダー&カマンベール」のような新味が多かった。しかし今回の「夜味」はシーンを提案するもの。
発売40周年のロングセラー「シャウエッセン」が、期間限定商品の「夜味」を発売し、初月目標の3倍のヒットを記録。シャウエッセンは限定品も出しているが、従来は「チェダー&カマンベール」のような新味が多かった。しかし今回の「夜味」はシーンを提案するもの。
基本的にシャウエッセンの主な喫食シーンは朝と昼であり、夜に食べるものではないため、味がわからない「夜味」というアプローチは一体どんな味?夜に食べる専用とは?というポジティブな反響を生み出すことに成功したわけである。面白いのは展開として「夜味」→「パワ辛」→「夜味シリーズ 花火」と変化させていったこと。夜味で夕食のおかず市場をこじ開けたあとに、今度はそのスパイスな文脈で夜のおともにふさわしい辛め商品を展開、さらに「夜味」をシリーズ化、するというポートフォリオの展開。
この「時間をずらす」という戦略はカテゴリーエントリーポイントを増やすうえで有効なアクションとしてよく使われる。古くは缶コーヒーの「WANDAモーニングショット」が有名だが、時間をずらすことによって「このタイミングでも食べられる」という提案をすることができる(もちろんその提案に有効性がある前提ですが)。ブランドの想起する主観を増やし、購買機会を増やせば単純に売上は積み重なる可能性がある。しっかりとした提案がある前提だが、強力なアプローチとして覚えておきたい。
生成AIはなぜブランドキャンペーンを行うのか?Anthropic初のブランドキャンペーン「Keep Thinking」
AI「Claude」を提供するアンソロピックが、初のブランドキャンペーン「Keep thinking」を開始。動画広告だけでなく、NYでポップアップストアを行うなどして、大きな話題になっている。
スローガンの「Keep thinking」はなんとなくAppleの伝説的キャンペーン「Think Different」を彷彿とさせるが、多くの人がAIに感じるありがちな危機感「AIが人間の仕事を奪い、思考を停止させる」に対した答えになっている。あくまでClaudeは我々のAIは、あなたの思考を止めさせるのではなく、むしろ促進するパートナーだ」ということを明確に表現している。動画の内容もチェスのグランドマスターがClaudeと対話しながら思考を深める様子や、デザイナーがClaudeを使ってアイデアを洗練させるシーンなど、AIに存在を奪われそうな人を選んでいる印象。
上記はブランドムービー。
なぜAI会社はブランドキャンペーンを行うのか?それは近年AIのモデルの性能が急速に向上する一方で、GPT3が初登場した際の衝撃のような変化は少なくなっており、各社の差が縮みコモディティ化、あるいはエキスパートレべルでないと差異が分からない先鋭化が既に始まっている。
一方でAIは急速に社会に普及し、もともとはBtoB的な側面が強かったAIも、AI会社が考える以上のスピードで一般消費者が日常的に使うBtoCも大きな戦場になっている。そう考えると、AI会社としてはコモディティ化するサービスそのものの訴求だけでなく、ブランドパーセプションを獲得するアプローチをしなければならない、と要請されるようになったわけだ。更にAIに対する不安も取り除く必要がある。アンソロピックのアプローチは、まさにそのような差別化をするための、第一歩という印象。
事実、ポップアップストアには遠方から人が訪れるほどポジティブだったようなので、ロイヤリティ形成にはポジティブなんじゃないだろうか。
源泉かけ流し!今週のマーケティング関連トピックス(今週は22個ご紹介!)
キーワードはNOTタイパ、ご自愛、開拓。変化する“映え”の最新トレンド
「映え」のニュートレンドは自然な映えに自分らしさを追加する流れ。
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あえて手間を掛けた手作り
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自分好みの具材を選ぶ
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自分ならではのスポットの発見
画一的な映えではなく、作られた映えでもない、という方向性。
世界の人気アプリ100個を分析して見えたペイウォール設計の心得
サブスクの請求画面、ペイウォールを世界のアプリ等を100案件見てセオリーを人力で分析した記事。
サブスクに関わる人は絶対読むべきな素晴らしいまとめになってます。
実際に掘り下げてみないとわからないことが絶対ありますよね。本当に有用。
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- 海外現地調査レポート:イマーシブエンタメの世界最高峰『Sleep No More』(スリープノーモア)とは?
- 明日から効く!マーケティング/ブランディング関連書籍レビュー
- 1年後に効くかも?あなたにおススメなインプット
- 今週の1曲
- 最後に!
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