買い物の主導権がAIになる?&ビオレママの本名を知ってる?
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マーケティングトレンドインプット 今週のクイック解説3選
GoogleのUniversal Cart「買い物かご」が店主体から人主体へ移るその先で起きること

Googleが2026年5月のI/Oで「Universal Cart(ユニバーサルカート)」を発表。AI時代の買い物体験を、根っこから変えるかもしれない構想だ。
仕組みをシンプルに言えば、買い物かごがGoogleの全サービスを横断して「ついてくる」。検索していても、Geminiと話していても、YouTubeを見ていても、Gmailを開いていても、気になった商品を同じカートに入れられる。GoogleはこのUniversal Commerce Protocol(UCP)をShopifyと共同開発しており、複数の店舗からの購入を一つの体験の中で完結できるようにする。
これまでカートは「店のもの」だった
これまでネットショッピングのカートは、基本的に店ごとにあった。Amazonのカート、楽天のカート、それぞれ別でカートは「店側」のもの。店側のものだから、当たり前だが店に行かないと使えない。Universal Cartは、この前提をひっくり返す。買い物かごが店舗にあるのではなく、生活者固有のものになる。どのサービスを使っていても、同じ一つのカートに商品が貯まっていく。カートが「店のもの」から「人のもの」へ移る。
ここが構造的な転換点になるかもしれない。買い物の起点が店ではなく、人の側に移る。
ただの保存箱ではなく、AIが裏で動く仕組み
このカート、商品を保存するだけではない。カートに入れた瞬間から、AIが裏で働き始める。
値下げの追跡、在庫復活の通知、そして互換性チェックまで自動でやる。自作PCのように複数の小売店から部品を集めるような複雑な買い物では、購入前に部品同士の互換性の問題を検証してくれる。価格、配送、サステナビリティ、返品ポリシー、過去の購入履歴まで考慮して、信頼できる推奨を返してくる。さらにGoogle Payと連携して、どの決済手段が得か、ポイントや特典まで踏まえて提案する。
カートというより、買い物専門のプロが常についてくる感じ。生成AIへの相談は相談された時点から動き始めるが、それよりもさらにシームレス。これまでのECは、欲しい商品を見つけたあとに「どこで、どの条件で買うか」を自分で比べていた。Googleはそこをまるごと引き受けようとしている。これはカートを統合しているというより、「買う直前の判断の統合」をしているといえるかも。
さらにその先の体験も。AIが代わりに買う
そして今回の発表で気になるのはUniversal Cartの裏で動いているもう一つの仕組み。Agent Payments Protocol(AP2)。これはあらかじめ設定した予算とブランドの範囲内で、AIエージェントがユーザーに代わって購入を完了させる仕組みだ。この最新版では「Human Not Present(人間不在)」決済が導入され、限定発売のチケットが発売された瞬間に、エージェントが自律的に購入できるようになっている。
つまり方向性としては、AIが「比較してくれる」段階から、AIが「代わりに買う」段階に関してもGoogleは視野に入れている。これはAIアシスタントを受動的な推薦ツールから、オンライン取引の能動的な参加者へと変える動きだ。
Googleの最大の武器は「すでに全員が使っている」こと
Googleがこれを強力に進められる理由は、顧客接点をすでに全部押さえているからだ。検索、Gemini、YouTube、Gmail。ほとんどの人が当たり前に毎日使っている。新しいアプリをダウンロードさせる必要がない。生活の中にすでにあるサービスに、買い物機能を溶かし込むだけ。
しかも参加する小売の顔ぶれも強力で、UCPのパートナーにはAmazon、Walmart、Shopify、Nike、Sephora、Targetが名を連ねている。その下には600億件以上の商品リストを持つShopping Graphがある。インフラとしての規模が桁違いだ。
ブランドにとって何が起きるか
これが当たり前になると、生活者はモノを買うときにブランドサイトに行かなくなる可能性がある。
これまでの購買行動は、検索して、店を比べて、最後にブランドサイトや店舗で買う、という流れだった。生活者が最後に見るのがブランドサイトではなく、Googleのカートになると、購買直前の比較軸がGoogle側に寄っていく。
そうなると、ブランドは商品を「カートのAIに選ばれるルール」に従って作らないと、選ばれなくなる。比較の主導権が、人間ではなくAIに移るからだ。検索順位が重要だった時代から、Amazon内検索やレビューが重要になった時代を経て、次は「カートのAIに選ばれる理由・仕組み」を作ることが必要になる。
英語圏の議論では、ここがすでにかなり明確に言語化されている。最も重大な変化はこれだ。従来のECでは、ブランドはデザイン、広告、検索順位を通じて消費者の注意を奪い合っていた。エージェンティック・コマースでは、ブランドはデータの質、プロトコルへの準拠、カタログの完全性を通じて、AIエージェントに選ばれることを競う。競争の相手が、人間の注意から、AIの選択ロジックに変わる。「AIに比較されたときに残る商品」にならないといけない。
もちろん設計上、「ブランドが取引の記録上の事業者(merchant of record)であり続ける」構造は維持されている。決済がGoogle Pay経由でも、売り手はあくまでブランド側だ。強いブランドは、Googleのカートに乗りながらも、顧客との関係を自分の側に引き戻す設計を始めている。乗るか乗らないかではなく、乗った上でどこを握るか。プラットフォームに比較の一部を明け渡しながら、関係性の核は手放さない、という綱引きは続くだろう。
買い物の主導権はこう移ってきた。店に行く前に検索する時代から、検索結果の中で比較する時代へ。そして次は、AIとカートが勝手に比較してくれる時代へ。
GoogleのUniversal Cartは、表向きは買い物を便利にする話だ。実際、便利なのは間違いない。でも裏側では、購買の判断がどこで行われるかという、主導権の所在の話でもある。判断の場が、店から、検索から、そしてAIエージェントへと移っていく。
ブランドにとっての問いは、もう「どう見つけてもらうか」だけではない。「AIに評価されたときに、選ばれる商品データと、繋ぎ止める関係性を持っているか」になる。AIに選ばれる商品であること、そしてAIに選ばれた後に顧客を自分の側に引き戻せること。この両方を設計できるかどうかが、これからのブランドの分かれ目になるかもです。
ビオレママの本名は「あけみ」 20年寝かせたブランドアセットに新たな意味を持たせるマーケティング

ビオレママに名前があったって知ってますか?その名前が「あけみ」。今回ビオレが始めた「ありのままでいこう。」というプロジェクトので「わたし、あけみです。」と本名を明かしている。ていうかこの人、名前が「ビオレママ」じゃなかったんかい。僕も全然知りませんでした。
このキャンペーン、個人的には2026年に見かけたものの中でもトップクラスだと思っている。ブランドマーケティングの観点から、何がそんなに効いているのかを分解したい。
新しく作ったのではなく、ずっとあった資産に光を当てた
これは新しいキャラクターを作ったわけでも、設定を盛ったわけでもなく「あけみ」という名前は、1999年の登場時からずっとあったらしい(もちろん強力にプロモで主張していたわけではないが)新しく設定を足したのではなくずっとあったアセット(資産)に光を当てた。20年以上、毎日どこかのお風呂場や洗面所にいたのに、誰も名前を聞かなかった。「ビオレママ」で事足りていたから。
ビオレママはほぼ全員がなんとなく知っている共有財産みたいな存在。極めて強いブランドの識別資産。あの顔を見れば、誰もが一瞬で「ビオレだ」と分かる。その資産に名前があったよと伝えるだけで、価値観を揺さぶっているのが面白い。
「あけみです」は、こちらを問う仕掛けになっている
なぜ揺さぶられるのか。
表面的にはビオレ側が「実は名前があったんです」と教えてくれている。でも本当はこっちが勝手に「ママ」でひとくくりにしていた、ということに気づかされる。
家事は「名もなき労働」なんて言われたりするけれど、人を概念でくくるのは別にママに限らない。パパも、おじさんも、若者も、雑にカテゴライズされがちだ。便利だし、悪気もない。ビオレママもその一種で20年間ずっと「ママ」という概念のままだった、とも言える。
だから「あけみです」という一言は、名前をつけた施策というより、「ママを名前のない概念として見ていたのは誰か」を問う仕掛けになっている。別に言われてないから知らないだけなんだけど「名前があるのに、見向きもしていなかった」という事実に気づかされて、ちょっとドキッとする。
「どうでもいい固有のディテール」が、概念を個人に変える
設定を見ると、あけみさんの趣味は「ダジャレを考えること」と「水玉のスカーフ集め」らしい。
正直、どうでもいいといえばどうでもいい。でも、この「どうでもいい固有のディテール」があるかないかが、概念と個人の決定的な差なんだよね。
「ママ」は概念だ。誰のことでもあり、誰のことでもない。でも「水玉のスカーフを集めている」まで来ると、急に概念ではなくなる。リアルな手触りが生まれる。スカーフが「水玉」という、どうでもいいけど具体的なディテール。この解像度が、抽象的なカテゴリーを一人の個人に変換する。
人を概念で見るとき、人は記号になる。「ママ」「おじさん」「Z世代」。でも固有名と、どうでもいい具体的な趣味が加わった瞬間に、記号が人格になる。あけみさんがダジャレ好きで水玉のスカーフを集めている、という情報は、機能的には完全に無意味だ。ビオレの洗浄力とは何の関係もない。でも、その無意味さこそが、「概念」を「個人」に変える鍵になっている。

先日「おじさんコーデ」がXでバズっていた。上記のAI生成画像で「休日の商業施設を歩いているこのおじさんのコーディネートがダサい」という話題。こうした話題における「おじさん」もまた名前のない概念である。概念は個人ではないから、どれだけネタにしてもいい、という暴力的な構造がある。こうした無自覚的な人の姿を暴いているのだ。
ロングセラーの難しさを、ヘルシーに解いている
マーケティングの実務として見ると、この施策はロングセラー商品が抱える固有の難しさをうまく解いている。
ビオレは超ロングセラー。こうしたロングセラーは非常に強いアベイラビリティ(思い出されやすさ、手に入れやすさ)を持っている。誰もが知っているし、どこでも買える。でもその一方で、強く感情に訴えかける存在にするのは難しい。ここを打開しようとすると、派手な芸能人を起用したり、新しいキャンペーンキャラクターを立てたりする。ただこうした仕掛けはコストもかかるし、既存の資産との接続も切れがちだ。
でもこの施策は、新たに何かを派手に追加するのではなく、既存資産をヘルシーに活用している。20年あったキャラの名前を強調するだけ。新規投資は少ない。しかも一過性ではなくて、ビオレママの顔を見るたびにあの「ドキッ」とした感情が少しだけよみがえる。「あ、この人あけみさんなんだ」と。それは一種のロイヤリティ形成だと思う。商品を見るたびに小さな物語が再生される。
このキャンペーンが教えてくれるのは、ブランドの資産は「増やす」だけが選択肢ではない、ということ。
多くのブランドは、新しいキャラ、新しい機能、新しいタグライン、新しいアンバサダーと、足し算で価値を作ろうとする。でもビオレがやったのは持っている資産を増やすのではなく、見つけ直させるということ。
「アナログ回帰」ではなく「アナログ風」。オフラインっぽさが、オンラインで一番ワークする
アナログ回帰、とよく言われる。そして実際これは起きている。トイカメラもフィルムカメラもレコードもいま売れている。エモいレトロ写真のタッチもずっと人気だ。現象としては間違いなくある。ただ、求められているのは「アナログ」ではなく「アナログ風」なのかもしれない。
「不便そうに見えるもの」が商品になっている
象徴的なのが、最近のデジタル製品の作られ方。
タカラトミーが出したデジタルのトイカメラは、レトロな画質で撮れるけれど、撮った写真は二次元コードでスマホにすぐ転送できてチェキとも連動する。OM SYSTEMの人気デジカメも見た目は古いフィルムカメラのフォルムなのに中身は最新機能てんこ盛り。フィルムを選ぶように「フィルムっぽさ」を選べる。

売れているのはアナログそのものではなく、アナログの「手触り」「ノイズ」「不便さの記号」、そこにデジタルのUXをのせたもの。本物の不便は要らない。けれど、不便そうに見えるものが欲しい。
レコードを買う人の多くは、針を落とす儀式や、A面B面をひっくり返す手間を含めて愛している人もいるが、一方で「レコードのある部屋」「レコードを聴く体験」という記号が欲しい層もいる。フィルムカメラも現像を待つ時間や偶然性を愛する人もいれば、「フィルムで撮った絵」だけが欲しい人もいる。後者にとって、アナログは体験ではなく見た目のオプションになっている。デジタルの利便性は手放さず、アナログの質感だけを乗せる。
なぜそうなるのか→最終着地点はSNS
なぜアナログの「見た目だけ」が欲しいのか。理由はたぶんシンプルで、最終的にそれをSNSに上げるから。
オフラインっぽい見た目が、オンラインで一番ワークしているのが現在。本日の一曲で紹介するcharieXCXのbratもそうだけど、レトロはウケる。ネガをラボに置いてデータだけ受け取るのはその意味で完全に合理的。SNSに上げるのに物理のネガは要らない。要るのは「フィルムで撮った感じ」のデータだけ。
これはアナログに限らない、今のSNSの効き方そのものでもある。あえて作り込まない感じのアーティストの舞台裏動画がバズる。手書きっぽいフォントが効く。素朴な表現、生っぽい質感が、いまSNSで一番ポジティブ。数字を持ってる。
皮肉なことに「生っぽさを作り込む」のがいまのクリエーティブの勝ちパターン。編集されたものは、もはや生でもなんでもない気がするけれど実際そう。完璧に編集された広告映像より、雑に撮ったような縦型動画のほうが効いている。
「不便益」がコンテンツになる
もう一つの鍵が「体験性」だ。
レトロなデザインやタッチであることだけが重要なのではない。「自分で撮った」「現像を待った(風の演出をした)」「手間をかけた」という体験の物語がセットになると、SNSで強くなる。
つまり、不便そのものがコンテンツになる。「不便益」という言葉があるけれど、わざわざ手間のかかることをした、という物語が価値を生む。効率だけを追えば全部スマホで撮ってデジタルで加工すればいい。でも、あえてフィルムカメラを持ち出して、あえて現像に出して、という手間の物語が、写真そのものより強く効く。
ここでも面白いのは、その不便が「本物の不便」である必要はないこと。ネガを受け取らずにデータだけもらうように、不便の「演出」だけあればいい。手間をかけた風の物語があれば、実際の手間は最小化していい。不便の記号と、利便性の実利を、両取りしている。
回帰しているのは「技術」ではなく「見た目」
そう考えると、これは「アナログが純粋に復権している」という話ではない。「アナログという記号」が、デジタル上で一番映える素材として再発見されているのが本質なのでは?と思うのだ。
回帰しているのは、技術でも生活様式でもなく、アナログの見た目のほうだ。レコードプレイヤーの売上が伸びても、音楽消費の主流がサブスクから物理メディアに戻ったわけではない。フィルムカメラが売れても、写真の保存と共有はクラウドとSNSのまま。生活のインフラはデジタルに置いたまま、表層にアナログの質感を貼っている。
これは「レトロ風のデザインを出せば売れる」という単純な話ではなく、見た目のレトロさと、体験の物語性がセットになったとき。「アナログ風の質感」×「手間をかけた風の体験」×「SNSで映える」。この3点が揃って初めて、今の生活者に刺さる。
前週のマーケティングジャーニー!
実は私、Podcastもやってます!元テレビ朝日アナウンサー、現令和トラベル役員の大木優紀さんと2人でマーケティングトレンドや旅について(ほぼ)毎週30分~40分のコンテンツをお届け。
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サントリーが提供する「押し放題」の油そば屋が渋谷に登場。黒烏龍茶のプロモ。
「UXで商品のUSPを伝える」直感的に面白い施策だよね。
全24種のトッピングを30秒間押し放題。
ゲーム的にも面白いし、カオスになったらシェアも促進。
→それが黒烏龍茶のこってり飯との相性を伝えるいい施策。
出荷数2,000万本突破、謎の「NOPE」現象 サントリーのしたたかマーケ
みなさん、まだNOPE飲んでますか?
一般層というより「マーケターに刺さった」感の強いNOPE(もちろん僕もですが)
実際、妙にマーケティング従事者に刺さりやすい広告スタイルは存在する
ミーム活用、屋外広告、コラボ、他社に乗っかる…
ココに反応するのはバイアスって自覚は忘れちゃいけない。
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