長く続けるための休みかた、戻りかた。
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マーケティングトレンドインプット 今週のクイック解説3選
NYで起きているサウナ戦争 入浴文化を「ソーシャルウェルネス」に魔改造した社交の再定義
ニューヨークで「サウナ戦争」が起きている。筆頭のBathhouseはブルックリンとマンハッタンに大型施設を構え、マンハッタン店は約35,000平方フィートで非常に大きい。1日券39ドルから、月額145〜225ドルの回数制メンバーシップと高額。内装は映画の『DUNE』や『ジョン・ウィック』のように世界観たっぷり。今年、3,500万ドル(50億円超)の資金調達が報じられ全米8都市への展開を見込む。
競合のOthershipも約2,000万ドルを集めるなど資金調達が過熱。サウナ店の出店競争とは思えない金額が動いていて、このカテゴリーは「ソーシャルウェルネス」と呼ばれ始めている。
サウナが文化としてある日本や北欧の感覚だと、サウナは銭湯や温浴施設で幅広い人が日常的に使うもの。一方でNYで起きているのは「人とつながる場所の再定義」としての温浴施設なんじゃないか。

バーの代わりに、熱と冷水で「状態変化」を共にする
背景にあるのはアルコールやドラッグといった夜の社交を推進してきたモノの減退。米国では2025年、酒を飲むと答えた成人が54%と調査史上最低に。バーやナイトクラブ、パーティといった従来の社交が縮小する一方で、人と会いたい欲求は変わらず存在する。WHOの報告では世界で約6人に1人が孤独を経験しており、人は人と会う場を求めている。
アルコールを大量消費するパーティの役割、あるいはバーの役割は仕事モードから切り替わる、普段より少し開放的になる、時間に区切りがつく、誰かと同じ体験をする、そうした人の「状態変化」を人と共同でやることに意味があったと私は考える。あくまでアルコールはその手段。ソーシャルサウナはこの状態変化の手段を熱と冷水に置き換えている。汗をかき、冷水に入り、“ととのう”。身体的には心拍や体温の変化があり、精神的には気分がグラデーションする。状態変化を共にするという社交の核はそのまま、その題材を入れ替えた感じ。
ガイド付きの温冷浴はほぼ小さな儀式である
もう一つの発明は儀式性。サウナ好きの方はご自分の持つサウナのルーティンを持っていると思う。サウナに何分入り、水風呂から外気浴を何分で、それを3セット、みたいなことがよく語られるだろう。そのプロセスを大切にする、という様は儀式的である。サウナが趣味としていされやすいのはこの側面があることも大きいはずだ。こうしたものをソーシャルサウナはみんなでやる。一緒に儀式をくぐれば、まるで洗礼を受けるかのような宗教性を帯びてくる。
これが社交として強い理由は2つある。ひとつは、同じ試練をくぐった者同士の親密さが強制的に進行すること。日本語で言えば裸の付き合い。もうひとつは、健康という表向きの目的があること。交流を主目的にするとなんだか身構えてしまうが、サウナには「健康のために来た」というわかりやすく正当な理由がある。
親密さを上げるぶん、ルールも細かくなっている。Othershipは通常営業をナンパ禁止と明示し、カップル向けの夜は別枠のイベントとして切り出し。こうした社交商品はコミュニティ運営のプロトコルがキモである。スナックのママが客のふるまいをコントロールする力が求められることと同様。
なぜソーシャルウェルネスはここまで高単価化にできるのか。東京の銭湯は今600円だがNYの新興サウナは1回29〜39ドル。物価を考慮しても約8-10倍の差は大きい。これがウェルネスに結びついているがゆえ。サウナや冷水浴が科学的にどこまで健康にいいかはともかく、健康「風」であることが決定的に重要で「夜遊び」に比べれば圧倒的にヘルシーだろう。ともに健康を追求することで、遊びと社交を高く売ることが可能になる。

銭湯とサウナの本場から見ると、これは魔改造である
共同入浴で人とつながる文化自体は何も新しくない。フィンランドのサウナは生活の一部だし、ドイツにはサウナマスターが音楽や香りで演出するアウフグースがある。日本の銭湯はそもそも地域の社交インフラ。古くさかのぼればローマの共同浴場もそうだろう。
NYの新しさは入浴の発明ではなく、その古い文化を都市生活者向けに魔改造したことにある。男女混合・水着着用にして、アプリ予約と会員制を導入し、内装を映画のように作り込み、DJやイベントを入れ込み、ウェルネスという大儀女木分を掲げる。昔からあった社交的入浴の現代アメリカ的な再商品化。
ファンケル「#なつやすミセス」 アーティストの休暇が広告になってしまうことからみる、伸びるIPの寿命
7月、渋谷駅の大型サイネージにファンケルの「#なつやすミセス」という広告が出た。「宛先」はMrs. GREEN APPLEのメンバー3人。彼らは2026年の夏に1カ月の長期休暇を取ると1年近く前から発表していて、この8月がその夏休みにあたる。広告の中身は、休みに入る3人への手紙を模している。「ゆっくり休んでね」というファンの声を企業が代弁する広告。

「ゆっくり休んでね」をスポンサーが屋外広告にした
大森元貴には睡眠、若井滉斗には紫外線と食生活、藤澤涼架にはシワとセラミドと、それぞれ別の内容。これは3月のCM撮影時に実際に受けた3人の肌測定とカウンセリングに基づいているらしい。ファンケルが広告しているのは無料の肌測定サービス「FANCL SKIN PATCH」で、一人ひとりを見て助言するというサービスの中身を手紙に合わせて実演している。
構造として面白いのは、通常のタレント広告の「逆」であること。一般的な広告がタレントを起用する場合、当然ブランドにそのタレントの持つ好意と信用を貸与する。しかしファンケルはブランド側がタレントを気遣う。ファンから見れば「推しが商品を売らされている」のではなく「このスポンサーは推しを大切にしてくれている」になり、その支持がそのままブランドに返ってくる(ことを狙っている)。休んでほしいと思うことも正しいファン行動だ、と公式に認めてくれる広告でもある。

休みは「謎の言葉」でごまかすものから「予定して発表するもの」へ
で、ここからが僕の感覚なのだけど、そもそもアーティストの休みは長いこと「説明しなければならない異常事態」だった。「卒業」「充電期間」などの言葉選び。シンプルに休む、と言ってもよさそうなところが「謎の言葉」でふわっとあいまいに。あるいは休む際は謝らなければいけない。アーティストは休んではいけない雰囲気だった。それがいま、ちゃんと説明して、ヘルシーにしていくアクションとして定められるようになってきている。
言葉は変わり、休暇が予定され、病気も公表される。日本で言えば、宇多田ヒカルの「人間活動」、いきものがかりの「放牧」、休止を継続のための物語に変える言葉が発達。さらに嵐は活動休止を約2年前に告知。サカナクションの山口一郎はうつを公表し、回復の過程までキャリアの一部として共有した。
ミセスは、活動を止めるのではなく、続けることを前提に夏休み取得を宣言。実際大森は、今のペースは「あまりにもアンヘルシー」で、身体や心を壊しては意味がないと夏休み取得の理由を説明している。(彼らの活動ペースを見れば一か月は短すぎるような気もするが…)黙って頑張るのが美学ではもうなくなった。世界的にメンタルヘルスやワークライフバランスが大切にされるようになった流れと符合する。
韓国ではもっと組織的で、BTSは2022年にグループの速度を落として個人活動へ広げ、BLACKPINKはグループ契約だけ更新して個人の所属は各自バラバラに。少女時代やSHINeeのように、事務所を離れたメンバーがグループ活動には参加し続ける形も増加。解散が選択肢でなくなったというより、「解散か、全員が同じ会社に残るか」という二択ではなくなった。2024年には制度面でも専属契約が改定され、心身の状態を考慮し本人の意思に反するスケジュールを強制できないよう制定。
北米は事後対応型が目立つ。ショーン・メンデスはツアーを中止し、ルイス・キャパルディは病名を公表して無期限に止まり、チャペル・ローンがフェスを辞退したときは、主催者側がファンに理解と支持を呼びかけた。ついきのう、8月3日にアリアナ・グランデも長期休養を発表。
ただ、これはおそらくトップアーティストだけの現象だ。トップですら全員ではないし、韓国の中小事務所では早期解散が続き、大事務所でも過剰労働による活動休止は後を絶たない。契約に健康を書き込まなければならないこと自体、問題の根深さの証明でもあって、業界構造が抜本的に解決したわけではない。ただ潮目が多少は変わり始めているという話。
ファンは「もっと会いたい」と「長く会いたい」を同時に持つようになった
ファンの側も変わっている。ENHYPENが401日に及ぶツアーの直後に次のツアーを発表したときは、ファンのほうが健康とバーンアウトを心配してスケジュールの停止を求めた。TWICEの直近ツアーの上記を逸した81公演にはファンが常に心配の声をあげている。
推しに会いたいという思いの強さが弱まったわけではない。もっと会いたい、と、心身を大切にして長く活動してほしい、が両立するようになった、という感じ。
トップアーティストを中心に、グループやIPの寿命は明らかに伸びていて、休みを挟みながら断続的に続けるキャリアが成立しやすくなったことも大きい。ストリーミングで過去曲は回るし、ファンクラブとSNSが不在期間の関係維持を行う。実際ミセスも、8月の休暇中にファンクラブでは毎日参加型のスタンプラリーが動いているらしい。そして復帰直後の9月末にはアルバムと13都市28公演のツアーが開始する予定。変わったのは、アーティストが休むようになったこと以上に、休むことがキャリアの中断ではなく、キャリアを継続するための手段として、本人・ファン・事務所・スポンサーから共同で正当化されるようになったことなのかもしれない。
カルビー・白黒ポテチのその後 45%増から4週連続減のデータで言えることと、まだ言えないこと
このレターで5月にカルビーの白黒パッケージを「(PR目線で)先行者だけが得る利益」として取り上げた。ナフサ不足に業界で最初に、最も大胆に動いたカルビーがPRの果実を総取りに近い形で受け取る、実売も増えるのでは、という読み。紹介した者の責任として、出てきた数字で答え合わせをしたい。(数字はリンク記事参照)
日経POSによると、ポテトチップスうすしお味の来店客1,000人当たり販売金額は、白黒が話題を集めた6月第4週に前週比45%増。そこから4週連続で落ち込み、ピークからの減少幅は直近1年で2番目になった。コンソメパンチとのりしおも同じ傾向。カルビーは7月9日、原材料調達のめどがついたとして、8月生産分からポテトチップスなどを表面のみカラーに戻すと発表している。

起きたこと:先行者利益は実際にあった
話題化と初速は読みどおりだった。ロングセラーブランドがいきなり実売45%増になることはほとんどない。これは政府が火消しに動くほどの追加の動きも含めて、大きくメディアで取り上げ続けられた効果によるものだろう。
白黒パッケージに続いた会社は結局カルビー以外に現れず。カゴメは印刷面積を減らして透明部分を増やすなど各社のインク削減策は限定的。正面を白黒にする決断をしたのはカルビーだけで、カラフルな棚の中で目立つ状態は最後までカルビーだけ。それでもその珍しさで売れ続けたわけではない、というのが今回のデータになる。
構造としてはこう。初速を作ったのはニュースで、継続を作るのはパッケージ。報道とSNSの露出は1週間程度で減衰する。そこから先は棚の上のパッケージパワーだけで日常の購買を競合商品と戦う局面に入る。
まだ言えないこと:4週連続減を「白黒のせい」と断定できない
まだカルビーの決断に関する振り返りとしては情報が足りていない。
まず、ピークからの減少幅で見るのは山が高いほど大きく出る。
45%増という山を作れば、その後の正常化だけでも「直近1年で2番目の下落」は起こりうる。ましてやベストセラーブランドなので。白黒化前の水準を下回ったのかどうかは公開情報からは分からない。
そこに、6月から一部商品の5〜10%の値上げが重なっている。しかも提示されているこの指標は販売数量ではなく販売金額なので、値上げ後の金額減は数量ではもっと弱いのかどうかがわからない。さらにカルビーの決算を見ると、夏場はポテトチップスの売り上げ自体が弱いタイミングでもあるらしい。
現状外からわかるデータが示しているのは「話題のピークの後、勢いが4週続けて落ちた」ことまでで「白黒にしたから売れなくなった」という因果は不明。日経の「誤算」という見出しはやや走りすぎな気がする。
それでも言えること:識別と食欲は、別の仕事だった
そのうえで旧記事の自分に足りなかった視点をひとつ認めたい。
当時僕は、ロゴ・フォント・袋の形といった認知の蓄積があるから、色を引いても「カルビーのうすしお味だ」という識別はギリギリ成立すると書いた。そして白黒は対比構造で目立つ、とも。ただ食品パッケージの仕事は識別させることだけではない。もう一つ重要な食品としての「シズル感」が役割としてある。
半世紀の認知の貯金で肩代わりできるのは識別まで。おいしそうという感覚は、記憶のみならずその場で色と写真が想起させる。白黒ポテチは棚で目立っただろう。ただおいしそうに見えるのか?(しかも他社はいろんな方向で欲望を刺激しにきているのに)。
もともとサステナブルな施策でないことは、旧記事の時点で「長期的に続けるものではない」と書いたとおりで、そこも織り込み済みではある。判断が揃っていないのは、話題の上がり分と、その後の下がり分を差し引きして、白黒化がトータルでどれほど得だったのか損だったのか。もちろんそもそものコスト削減の数値も本来は見るべきだろう。おそらくそうした数字は外からではうかがい知れないが…
ちなみに8月からの仕様は「表面のみカラー」で、これは妥協というより設計の更新だと思う。表は売り場で戦う販売面、裏は手に取った後の情報面。インクの商業的な価値が高い場所から順に色を戻している。最初からこの形なら話題は小さかったはずで、話題性と販売機能はトレードオフだった、ということでもある。
引き続きこの件は続報を注視します。
前週のマーケティングジャーニー!
元テレビ朝日アナウンサー、現アロハセブン社長の大木優紀さんとやっているPodcastも1年続いております。過去分50回ありますが特に続きものとかではありませんので、気になったトピックの回だけ聞いてもらうのもおすすめです!だいたい40分ぐらい、ブランドやマーケのトレンドについて話しています。たまに趣味や旅の話も。
最新回では7月の注目ニュースのクイック4件の解説をお届け!
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源泉かけ流し!今週のマーケティング関連トピックス(今週は12個ご紹介!)
『Meet Your Häagen-Dazs あなたがまだ知らない、ひとくち。』
これはメチャクチャ人気出そうなイベント。
ハーゲンダッツのアイスクリームとトッピングの組み合わせで1万通りの中から自分好みのハーゲンダッツを作れる。
全てのアイスクリームのベースとなる『プレーンミルクアイスクリーム』が初公開なのが面白いね。
バニラでもないどんな味?
ブランド調味料サンドイッチ自動販売機
ハインツの「マヨ自販機」施策。
ロンドン・ソーホーの街角に現れた「AutoMayoMat」
正確にはマヨネーズのボトルではなく、マヨをたっぷり使ったサンドイッチを販売するポップアップ。
2日間だけ設置され、タッチ決済で57ペンス(=124円!)を払うとロッカーからサンドイッチを取り出せる。もちろん大行列に。
なんで57ペンスか?はもちろん、
これはハインツのブランド資産「57 Varieties」に合わせたもの。
ロンドン中心部では異常に安いので人が集まるし、なぜ57なのかを考えた瞬間にブランドの数字まで覚えてしまう。
ハインツはもちろんサンドイッチ屋ではないが、マヨ単体では体験として弱い。
そこでサンドイッチという実際の食べ方に入れ「おいしいランチにはハインツのマヨがいる」という関係ごと体験させる。
変な自販機、57ペンス、2日間限定、具材たっぷりのサンドイッチ、行列。
マヨネーズという地味な日用品を、街で目撃し、並び、食べ、撮影したくなるランチイベントへ変えるPRとしてシンプルで強い。
ポップアップ限定のトートもかわいいしデザイン面もしっかりしてる。
コンビニでプリンを買わなくなった? デザートの購入先に起きた変化
2018~25年の8年間におけるスイーツの購買状況推移をみると28.3%増加している。
特にシュークリームなどの生菓子、ドーナツなどの半生菓子が大きく3-4割増。
そんな中実はコンビニでスイーツを買う人は減少。
デザートの販路自体がドラストや一般小売などすそ野が広がっているっぽいです。
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