名前が、認識を先回りする。呼び方が、選ばれ方を決める。
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マーケティングトレンドインプット 今週のクイック解説3選
ブッククラブが同時多発的に盛り上がる理由と、デュア・リパがポルトに作った「禁書の図書館」
いま、ブッククラブが世界で同時多発的に盛り上がっています。
先頭を走ってきたのはデュア・リパ。2023年から続く「Service95 Book Club」は、毎月1冊を選び、本人が著者と対話し、世界中の読者が同じ本を読むオンライン中心のクラブ。デュアの活動の中でも異例なほど本気の読書コミュニティになっている。
日本では今月、モビリティの実験都市を作っているウーブン・バイ・トヨタが、読書会「Woven βooks」を始めると発表。三宅香帆や若林恵も参加し、25人が半年・全12回で「都市と人間」をテーマに読書会をする。参加費は書籍代込みで11万円とかなりの骨太仕様。「迷子になれる街」「無目的な空間をどうデザインするか」といった専門的な選書テーマからしてしっかりしてます。さらにNewsPicksのパブリッシング部門もオンラインのブッククラブを始めている。

読書人口が増えたわけではないんだけど
面白いのは、これが読書人口の拡大を背景にした動きではないこと。文化庁の直近の調査では、月に1冊も本を読まない人が6割を超えており読書人口がどんどん増えているとかではない。米国でもギャラップの調査で年間の読書冊数は12.6冊と、約30年で最低の水準。読書する人の頭数はむしろ減っている。
つまりいまの盛り上がりは「読む人が増えた」というよりも、読む人の熱量が高くなっている。読む人と読まない人がはっきり分かれて、読む側にとっての読書の価値が上がっている。
情報が無料になるほど、「行為としての読書」の値段が上がる
WEBとAIで、情報を手に入れること自体はほぼ無料で一瞬になった。大抵の有名な本はAIに聞けば要約が出力されるので「内容を知りたい」という観点で言えば読む必要すらない。となると情報獲得という視点としての読書というより、1冊に何時間もかけて没頭するという行為の方が、贅沢で価値のあるもの、それをやっている人が豊かな人である、という価値変化が起きているのかもしれない。
ブッククラブが提供するのは読むという行為が成立する環境。締切があり、仲間がいて、読んだ後に語る場がある。Woven βooksの11万円は本の代金ではなく、半年間「読む人でいられる」「読む人とつながれる」ことへの対価です。
もうひとつ、どのクラブにも共通するのが、象徴的なナビゲーターの存在。何を読むかと同じくらい「誰の目で読むか」も重要になっている。憧れの人と同じ本を読み、その人の視点も借りて語ることが価値。
デュア・リパは、その先で「禁書の図書館」を作った
この流れの一番先を行っているのがデュア・リパ、更に新しいチャレンジをしている。オンライン中心だったService95を、今年6月、物理拠点まで拡張した。ポルトガル・ポルトにある「世界一美しい書店」として知られる老舗書店Livraria Lelloと組んで、その一角に「Manifesto Library」という常設の図書館を開いた。(ちなみにこの書店はあまりに本を買わない観光客が増えた結果、いまは入場料を取っている)
場所は、プリツカー賞建築家アルヴァロ・シザが設計したこの書店の新しい文化ホール。収められているのは、学校のカリキュラムから外された本、LGBTQIA+を扱うために展示を制限された本など、どこかで検閲や排除に直面してきた100冊。棚はジャンル別ではなく「権力」「統制」「声」「記憶」などのテーマが設定されている。

この図書館の考え方が良くて、検閲とは焚書や発禁だけではない、という認識に立っている。棚に置かない、学校で扱わない、目に入る場所から隠していく。それも「本と読者が偶然出会う可能性」を消していく検閲の一形態だ、と。確かにそうですよね。現代に本を燃やす、みたいな焚書をすることはない。現代的な検閲、焚書は「出会わせないこと」だと。だからそれに対する策も、批判の声明ではなく、もう一度棚に置く場所をつくること。読書と討論と公共的な思考の場としても運営されると発表されている。
ちなみにこれ、期間限定のポップアップではないらしい。世界中の本好きが巡礼する聖地のような書店に置かれた常設拠点。オンラインで毎月本を届けてきたブッククラブが、読者が自分の足で来て、自主的に本と出会い直す場所をオフラインに持ったということ。ブッククラブにおける聖地といってもいい。SNSやニュースレターが本を「届ける」メディアだとすれば、この図書館は本を「残し、出会わせ、話させる」場所。ブッククラブの現在地として、いちばん先進的なのは間違いないでしょう。
美容室市場「過去5年最大」の中身 「美容室を選ぶ」から「美容師を選ぶ」への質的変化
美容室の市場規模が1兆3,884億円と、ここ5年で最大になったらしい(ホットペッパービューティーアカデミー推計。なお最新の2026年推計では1兆3,063億円・5.9%減といったん一服)。一方で美容室の数は27万軒超で過去最多。実はコンビニの4倍以上もある。そして1回あたりの利用金額は女性7,668円、男性4,879円と、これも過去5年で最高に。

市場は頭打ち気味、店は増え続け、単価は上がる。この数字の組み合わせの裏で、美容室では商材・経路・主体の三つが同時に入れ替わる、かなり大きな質的変化が起きていると思う。
商材の変化:「髪を切る」から「悩みの解決」へ
まずメニューの「深さ」とバリエーションが変わった。「カット」「カラー」という施術名のみならず「白髪ぼかし」「骨格補正ショート」「ダメージを抑えた縮毛矯正」などなど。人それぞれの髪悩みに対応した名前へ。課題解決型になっている。まつげや眉といったプラスαメニューの利用も増えていて、美容室は髪を切る場所から、外見の悩みの総合窓口になりつつある。(ちなみにエステ業界も客当たりの単価上昇が起きているとのこと)
単価の上昇は物価高の影響ももちろんあるが、こうした悩み解決をしてくれるなら、単にカット・パーマをする以上の美容投資となり、別次元のジャンルになるってことですよね。
経路の変化:ホットペッパーの一覧から、SNSの動画へ
従来の美容院の集客経路はホットペッパーが必須級。そのホットペッパービューティー世界の中で、場所、価格で比較されていた。ここで比較されるのは店単位である。
ただ、特に高単価帯で起きているのは別の動線。自分の悩みで検索し、SNSの動画と接触する。美容師が技術の過程と考え方、あるいはカウンセリングしている動画を見て「この人なら任せられる」と思って決めてから、最後に在籍する店の場所を確認する。こうなると立地は美容にこだわる人にとって決定的な要因ではなくなった。実際友人はお願いしている美容師のために埼玉まで行ってるらしいです。客は美容室同士を比較しているのではなく、自分の悩みを解決できる専門家を探している。
この動線変化を象徴するのが、美容師「個人」を直接予約するアプリのminimo。MIXIが2014年から運営していてるサービスで、掲載サロンスタッフは約7万人。
主体の変化:美容室から、美容師個人へ
考えてみれば、有名な美容室に行っても、髪を切るのもパーマをかけるのも美容師個人。実態は昔から「人につく」商売だった。昔からカリスマ美容師なんてのはいますよね。変わったのは、個人が独立しやすくなる環境が整ったこと。
SNSが個人の集客を、minimoのような直接予約が個人の顧客接点を、そしてシェアサロンが個人用の「箱」を用意した。面貸しや業務委託を含め、店を構えずにフリーランスとして開業できるインフラが一式いまはある。だからフリー美容師が増加するんですよね。美容室側から見ると地位低下とも言える。美容室の店側の生存戦略は、①個人を抱えて輩出する事務所化、②悩み特化の専門店化(白髪専門・縮毛矯正専門)、③設備と立地で勝つ箱の提供者、の3方向に割れていくのかな?中途半端な『普通にうまい店』が一番苦しいのは、他の業界と同じ構図なんでしょうね。
プレジデントの「そりゃ○○だわ」構文 クリックの引き金が「知りたい」から「納得したい」へ変わった
はてな匿名ダイアリーに、プレジデントオンラインの「そりゃ○○だわ」タイトルをひたすら追いかけた投稿が出ていて、これが面白い。サイト内検索での人力集計によれば、2017年に初出、2025年に本格化して通年56件、今年は8月時点ですでに91件と前年を超えているらしい。「そりゃ儲かるわ…年商18億円のきぬた歯科」「そりゃお金貯まるわ…ドイツ人の節約術」「そりゃ視聴率が伸びるわけだ…朝ドラあんぱん」。ここまでお約束構文として量産されているということは、プレジデント社内でも1つの勝ちパターンとして認識されてそうだし、単純にアクセスが取れているんでしょう。

WEB記事のお約束構文は、世代交代してきた
ネット記事のタイトルには、その時代ごとのお約束構文がある。長く王座にいたのは「なぜ○○なのか」構文。
「なぜトヨタは強いのか」「なぜ若者は車を買わないのか」。検索と相性がよく疑問でアクセスを引っ張る型として20年近く量産されてきた。並走して「○○する5つの方法」のようなリスト型もあるよね。どちらも「読者が知らないこと」を前提にして、その答えがアクセスした先の記事にあるって仕組み。
「そりゃ○○だわ」はこの系譜の新入りだけれど、仕組みが逆になっている。疑問を投げるのではなく「読み終わった人の納得感のある相槌」をタイトルにしている。答えは記事の先…ではなく「答えが確実にあって、しかも納得できるものがあるよ」と先に保証している。
疑問形は「知りたい」に効く。そりゃ構文は「納得したい」に効く
なぜこの逆転が起きたのか。(てかこの構文も自分も使ってるけど、これも読者の興味を先に引っ張るやり方だよね笑)
「なぜ○○なのか」は、知らないことを知りたいという好奇心で先を読ませる/クリックさせる構文です。ただこの構文、20年使われるうちに読者に学習されてしまった。開いても大した答えが書いていないことが結構あるよねっていう。がっかりした経験は誰にでもあるでしょう。疑問形のタイトルは「答えがない可能性」への警戒とセットになり、むしろ忌避される可能性も生まれているのかも。
「そりゃ構文」はこの警戒心への回答になっている。増田の分析でも。理由を知った後の読者の反応を先回りさせて、納得できる答えが存在するという期待を作る構文だと指摘されていて、これはその通りだと思う。読む前から読後感が見えている。ハズレを引かない保証つきであり、これってコスパ・タイパ嗜好に対応しているんじゃないか。
もう一段考えてみると、読者がWEB記事に求めるものが「情報」から「腹落ち」に変わっている可能性もある。情報自体はSNSでもAIでも手に入る時代に、足りていないのはニュースや現実のモヤモヤに整理がついた腹落ち感。「そりゃ○○だわ」というタイトルは、知識ではなくこの記事読んだら腹落ちしてすっきりするぞ、というラベルになっている。
ただ、お約束構文は発見されて、量産されて、そのうち摩耗する。年91件ペースで刷られている時点で、この構文の消費もかなり進んでいるはず。(それこそこのようにはてな匿名ダイアリーに発見されるように)次の構文がどこから出てくるかは分からないけど、疑問形には戻らず、読後の感情を先に見せる側から出てくる気がします。
前週のマーケティングジャーニー!
実は私、Podcastもやってます!元テレビ朝日アナウンサー、現令和トラベル役員の大木優紀さんと2人でマーケティングトレンドや旅について(ほぼ)毎週30分~40分のコンテンツをお届け。
最新回では「昔からある感じ」のブランドを分析してみました。TWG、バシャコーヒー、香水のビュリー。ロンドンのDishroomなどなど…実際の営業の歴史以上のブランドヒストリーを掲げている所のからくり。
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源泉かけ流し!今週のマーケティング関連トピックス(今週は15個ご紹介!)
「ミルクティー」が大ブーム?つい欲しくなる“映えカップ”が魅力 「中国茶」使った専門店も【Nスタ解説】
お茶…というよりはミルクティーが2026年下期のブームになるかも。
もちろん紅茶自体は日本でも親しまれているが、中国茶はスッキリしていてアレンジの幅が広い。
そして巨大×カップも映える(もともと中国・台湾のトレンド)
コーヒーを飲まない層に刺さっている。
花火大会やフジロックで『現地に行かない“配信派”』が急増「いかに快適に楽しむか」タイパ重視で消費に変化
花火大会やフジロックなどで「現地に行かない配信派」が増加
フジロックの参加者自体は今年はこの5年で最高であり、現地派減少、ではない。
配信によりイベントの参加スタイルが拡張しているのだろう。
ちなみに僕はフジロック、現地行ってますが、クルマで小休止してるときは配信でみてます笑
Z世代が二日酔いを「ロマンチックに捉える」理由:「実は、それは美しいことなんです」
二日酔いを、あえてロマンチックに見せる投稿がTikTokで増えているらしい。
目のクマ、だぼだぼのスウェット、ベッドでごろごろ、みたいな誰もが経験あるあれをあえて出す、「管理された乱れ」の演出。
もちろんグロッキーになってトイレにこもる姿は見せない。クマがありながらも、キャンドルを灯した、カプチーノを入れたり。
この「乱れつつも丁寧に回帰する」部分を切り出すイメージ。
健康バリバリでヘルシーな姿を見せ続けるのも疲れる。でも制御不能でもない。そんな隙のある瞬間が「二日酔いのロマン」になってる。
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- 海外現地調査レポート:Dib Bangkok現地レポ 「空間自体が演出」の私設美術館が、今年行った中でトップクラスだった
- 明日から効く!人生の糧になる書籍&映画レビュー
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- 最後に!
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