「ググる」のその先へ。AI検索が当たり前の時代におけるマーケティングのありかたとは? 25年7月第3号

今週は17個のニュース、書籍1本、スコットランドのクラフトビールをご紹介。今週は8948字でお届け。
南坊泰司 2025.07.15
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マーケティングトレンドインプット 今週のクイック解説3選

Z世代の「マイクロリタイアメント」

従来はリタイアするということは失職、マイナスのイメージだった。でもZ世代におけるマイクロリタイアメントはサパティカル休暇を超えて、より「攻め」のリタイアという印象が強い。例えばこのリタイア中にしっかり勉強をしたり、スキルアップをしたりする人も。

あるいは価値観の変化であるとも言える。「リタイア」は雇用が終了したあとのご褒美的な余生として活用されてきた。一方でこうしたZ世代のリタイアメントは時間という有限の資源をどこで活用するか?という選択の結果でもある。もちろん、そもそも「空白期間」のある人に対して、転職に対して社会や企業が寛容になってきた、という傾向も後押しをしているとも言える。

Z世代はこのリタイアの間に、自己のアイデンティティを再構築するのだろう。変化が激しくなる一方の世の中において、積極的に自分を整え、キャリアを捉え直すには、しっかり休むでもしないとできない困難なチャレンジである。いままさに足元ではAIが広がっているように、変化が速く激しくなる中で「同じことをちゃんとやり続ける」こと自体がリスクだと捉えているのかもしれない。

「“ググる”は崩壊する」の影響、その先のマーケティングの未来をかんがえる

インターネット登場以降「検索」は現代のWEBにおけるマーケティングにおいて、重要な起点であり続けていた。だからマーケティングに関わる人は、SEOを考えたり、あるいは各種SNSでの検索対応に常に取り組んでいた。しかしAIをエージェント的に活用して検索することが当たり前になれば(もちろん情報ソースは表示されるものの)Googleの検索画面がクリックされることはない。だからこそ、キーワード単位で最適化するSEOではなく、「AIに自社の情報を見つけてもらう」AIO(AI最適化)が必要になる時代が既にきている。

これはSEOというテクニックの変化だけに限らない。起点自体が拡散するようになったので、YouTube、TikTok、ポッドキャスト、ニュースレターといった、顧客が日常的に時間を費やすプラットフォームに「出向く」必要があるということでもある。AIOを完全にコントロールすることはできないことを考えれば、普段顧客が時間を費やす空間に出現しないのであれば、そのブランドはないのと同じになってしまう。

悩ましいのはAIOの勝者は少ないのでは?という危険性だ。SEOは小規模事業者でもうまくキーワード単位で大規模事業者に勝てる可能性がある仕組みだった。そもそもWEB検索の表示域は多く、例えば検索トップなら10企業はチャンスがある。AIは実際どうだろう。現状の「顧客の希望にこたえる」AIなら、強く指示しない限りは代表的な3件~4件を挙げるにとどまるはずだ。つまり検索が「寡占化」される可能性は否定できない。

「嫌われない値上げ」を回避するための考えかた

いまはインフレ時代であることは誰もが理解している。デフレ時代のように値上げしたから顧客がどんどん離れていくことはない(離れないわけではないが)。値上げに成功した企業、例えばミスドやココイチは直近で過去最高益を実現している(ココイチは見込み)。

全ての価格が上がり、物価は上がっていくものなのだと生活者が実感しているいま、値上げすること自体がNGとされることはなくなっている。厳密に言えば歓迎する人は当然いないが、仕方のないことだとみな理解している。また、いまはメリハリ消費の時代。例えば推し活のように熱量の高いアクションにはみんな惜しみなくお金を出す。インフレ環境下においてもとにかく倹約、という時代でもないのである。

そんな中で「嫌われる値上げ」とは何か。1つはシュリンクフレーション(=価格据え置きで商品の内容量などを減らす)に代表されるステルス的値上げ、あるいは(僕の造語ですが)「謎ロジック値上げ」も嫌われる1つ。これは例えばあのドロリッチが大きく減量した際に「女性が持ちやすいサイズにしたい」と説明するなどあえて値上げに無理やりの説明をつけようとすること。

いまは消費者がシュリンクフレーションなら検証したり、謎ロジックなら突っ込んだりと、かんたんにファクトを確かめて追及可能な時代であり、値上げという不可避なアクションに対して誠実に向き合うことが求められているのである。

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源泉かけ流し!今週のマーケティング関連トピックス(今週は17個ご紹介!)

ローソン駐車場で車中泊 1泊2,500〜3,000円、ホテル代高騰の受け皿に

ローソンの駐車場で車中泊ができるように。

1泊2,500円ほど。

これは面白いですね!

もともとコンビニは無断で車中泊もする人が多かった場所。それを公式にしてお金を取り、更にコンビニを利用してもらう。

ホテルは全国的に高騰しており、この価格は非常に魅力的だし、イベント時など柔軟に使える。

ポケモンに続け!? 研究者も漁師もスナックのママも「カード」に

トレーディングカードが広がる中で「名刺のトレカ化」が進行。

これ、面白いですよね。

社会規範がマイルド化する中で、一般的な名刺よりも慣れ親しんだトレカのスタイルの方が情報量も多くできるし、インパクトもある。

特に研究者の界隈で増加中。

いいな~これ、うちの会社でも作ろうかな。

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続きは、8913文字あります。
  • 海外現地調査レポート:BrewDog Waterloo/スコットランド生まれのクラフトビールの「巨大実験場」
  • 明日から効く!マーケティング/ブランディング関連書籍レビュー
  • 1年後に効くかも?あなたにおススメなインプット
  • 1年後に効くかも?あなたにおススメなインプット
  • 今週の1曲
  • 最後に!

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